もしも明智先生から眼鏡をもらったら
☆の別verとなります
お市先輩がどう否定しようと、先輩が贅沢者である事実は変わらない
あれだけ浅井先輩に好意を向けていられながら、不安を覚えるなんてのは失礼とも言えるだろう
誰がどう見ても浅井先輩はお市先輩が大好きで、お市先輩は浅井先輩に愛されている
その事実から目を反らし、もしかしたら…なんて不安を考えるのは浅井先輩への失礼に値する
向けられた好意は素直に受け止め、もっと幸せそうにするべき
「私もそうなのかな。」
眼鏡を外して立ち止まり、お市先輩へ向けた言葉が自分にもあてはまるのかを考えた
先輩に指摘されて違うと否定しても私も同じように相手の本音がどうなのかを不安を抱え、こうして明智先生から道具を借りた事によって本音を確かめようとしている
元々は普段から何を考えているのかが分からないからそれを確かめようと思ってでの事、だけど今は私をどう思っているのかが一番気になる
風魔君が私を好き、それはもう充分身を持って知っている
でも何処をどのようにして好きなのかと、詳しくは分からない
温かいだとか柔らかいとか落ち着くとか…そんな事より、もっと具体的に私を好きなのかを知りたい
充分な程相手が自分を好きだとは知っているのに更に本音を探ろうとしてしまうのは、やはり贅沢だろうか
こんな便利な道具を使用しようとしているのだから贅沢者と言うより、卑怯者?
「まぁ良いか。」
変に考え込むと話は進まず、折角先生が好意で貸してくれたこの眼鏡は無駄になってしまう
罪悪感を抱くのは後回し、今は本来の目的である彼の心の中を覗くのが優先だ
他人の日記を勝手に覗くなら兎も角、心を覗いちゃ駄目だなんて法律はこの世に存在しない
だから私のしようとしている事は人として間違っていても、法で裁かれはしない
裁かれるとしてもそれはこんな恐ろしく且つ便利な道具を発明した明智先生ただ一人、私は無理矢理使えと脅されたと言って泣けば皆許してくれるだろう
「さてと…風魔君、美味しいチョコがあるからおいでよ。」
「チョコよりなまえが良い。」
「…早いね。」
背後に居るであろう彼に声をかけると即座に返事が届き、私の頬には冷や汗が垂れた
ずっと背後に居たらしい彼はきっとこの眼鏡の効果と、私が何をしようとしているのかはお見通し
かと言って下手に隠しても無意味、此処は堂々と心の中を覗かせて?とお願いしちゃえば良い
お礼として差し出すチョコはポケットの中に3つ、朝から入れたままなので少々溶けているかも知れない
「この眼鏡、凄いでしょ!!」
「…眼鏡?」
「あれ?風魔君、ずっと私の後ろに居たんじゃないの?ずっと監視していたんでしょう?」
「見てはいたが…何をしていたんだ。」
「んぅ?」
「なまえ?」
首を傾げた私に続いて風魔君も首を傾げ、お互いの頭上に沢山の疑問符が飛び散った
背後にはりつき監視していたのに彼は私の手元にある眼鏡を不思議そうに見つめ、何の効果があるかは知らない様子
私を見つめるのに夢中になり過ぎて他人との会話は全く聞こえなかった…あ、彼なら有り得そうだ
この前も私と松永先生が軽い猥談をしていたのをずっと見ていたのに後で『何の話をしていたんだ。』とか真顔で聞いて来たし…間近で会話をしているのに声が聞こえないってのもまた凄い
それだけ私を見つめるのに夢中になったって事だけど、視線で私の体に穴が開かないかが心配だ
「一つ聞くけど…私が今から何をしようとしているとか、知らないの?」
「…俺に、キスしたい?」
「そっか。なら良いんだけど、ちょっとその場に立ったまま動かないでくれる?」
「………。」
危ない発言はスルーして当然、危ない思考を持つ風魔君もスルーしてこのまま帰宅したいくらいだ
スルーされた彼は不満そうではあるが私の指示に従い、腕を組んだままそこから動こうとはしない
さぁ、いよいよ彼の心の中を覗く時がやって来た
これまでに覗いたのは毛利先輩、真田先輩、親ちゃん先輩、伊達先輩、お市先輩?、浅井先輩
沢山覗いたけれ今目の前に立ち尽くしている彼が本命、いったいどのような本音が覗けるだろうか
緊張しつつも私は彼との距離を3メートル程開き、少しばかり震える指先で眼鏡を装着
なまえの裸エプロンが見たい
とか
なまえは俺の嫁
だなんて本音が見えたら速攻で退却、そんな彼らしからぬ本音は期待外れだし気持ちが悪い
「風魔君、私の事好き?」
「好きだ。」
ついに眼鏡を装着した私はゆっくりと顔を上げ、彼を真っ直ぐに見つめた
仁王立ちした彼は突拍子の無い質問に驚きながらも首を縦に振り、肯定を即答
しかしこれは本音であっても私の求めていた本音とは違う、私が求めているのは彼がこの質問に対して心の中で何を思っているのかだ
ごめんよ風魔君、少しばかり心の中を隅まで覗かせてもらうからね!!
(なまえが可愛い触れたい食べたい泣かしたいキスしたい抱きしめたい驚かせたい噛みつきたい意地悪したい嫌がるのを無視して押し倒したいその細い腰を掴んでグッと奥まで)
「ひゃあああああ!!!!!」
恐ろしい本音に耐えられずに悲鳴を上げたと同時に、眼鏡のレンズは再起不能なまでに粉々となってしまった
『なまえ、どうしたんだ。』
『変態!!近寄らないで!!』
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