理由。
(過去話)
「よおおおしっ!!!よくやったな光このやろおおぅ!!」
「仲崎部長いーたーいー」
インターハイ団体、個人優勝。
晴明高校剣道部に所属していたあたしは一年生にして快挙を成し遂げた。
一つ上の先輩はおらず、三年生の先輩が4人。最後の大会で有終の美を達成して引退した。もともと女子高だった晴明高校なため男子部員は三年生二人。先輩が引退してしまったらあたし一人だった。
「あんたよくやったよ!」
「ちびすけえらいぞお!」
次々とあたしを誉めてくれる先輩達、あたしは寂しくてどうしようもないくらい泣いた。そんなあたしを先輩はありがとうといって抱きしめてくれた。
その三ヶ月後。あたしは剣道から離れてしまった。別にひとりになってしまったからではない。やめざるをえなかったからだ。
「え…なにこれ」
目の前に広がる残骸。焼けた臭い。あたしは火事で家、両親、剣道をうしなった。防具ひとつ買うのも一苦労だったあたしん家にはまた剣道をやるためのお金なんてなかった。何より両親をなくしたショックと不安でやる気にもなれなかった。
そんなあたしを引き取ってくれたのがお父さん同士が馴染みのある星月さん家。何度か琥春さんや琥太にぃ、郁ちゃん達と遊んだこともあってか星月家に行くことになり、学校もかなり遠くなるため通えないから転校。そして、星月学園に入学してきた。
もう防具も焼けてしまったし、買うお金もない。それにいやではないけどやる気が起きない。あの時から剣道に手が出せなくなっていた。今やっても逆に足を引っ張るだけだし、櫻田先輩方が最後ならなおさら迷惑はかけたくない。
これがあたしの剣道をやらない理由。
理由。
(………なんだ、そんなことか)(は?!)
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