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ひとつ屋根のした。
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 「…何で笑うのぉ」


 ほっぺたをぷくっと膨らませ、私はちらりとお兄ちゃんを見上げた。



 途端、今度は私の心臓が跳ねる。




 「…、お兄ちゃ…」



 見上げた先――、その綺麗な黒真珠の瞳からぽろりと零れたのは、透明な真珠のような小さな雫…――。



 「…あ、悪りぃ、…何か…ホッとしたら…ははっ、みっともねぇ…ッ――」



 手のひらで隠された目元から、お兄ちゃんの綺麗な顔を透明な真珠が零れ落ちていく。



 …胸がきゅんと締め付けられた。



 「…お兄ちゃん…大好きだよ」


 私はお兄ちゃんの頭を抱き寄せると、頬を伝う涙に口付けた。


 背中に回されるがっしりした腕が私をきつく抱き締める。


 広がるお兄ちゃんの体温に、私はそっと瞳を閉じた…。





 ――…何だかいっぱい勘違いやすれ違いをしたけれど…、お兄ちゃんのくれた“約束”のお蔭で、ちゃんと話すことが出来て本当に良かった。



 お兄ちゃんと前の彼女さんがどうして別れたのかは判らないけど…、きっと、優しいお兄ちゃんは、元カノさんとのことをずっと負い目に感じてて…。


 だから、不安だったんだね。


 私が自分に自信がなくて負い目を感じていたように――。



 …勿論、今でもちょっと、やっぱり釣り合わないんじゃないかって思っちゃうんだけど…。


 …でも、お兄ちゃんが私のことを本当に大切に想ってくれてるんだって判ったから。


 だから、お兄ちゃんを信じるね…?




 「…里緒」


 耳元で囁かれ、瞼を開ける。


 ゆっくりと私の身体に回していた腕を解くと、お兄ちゃんは私の前髪を撫でるようにして掻き上げ、額を露わにする。


 そして、その額にそっと自分の額を重ねると、訊ねるように囁いた…。



 「…もう、お前にしか触れないから…だから、ずっと俺の腕の中に居てくれるか…?」



 不安気に揺れる黒真珠の瞳に、胸がきゅんと締め付けられた。


 それでも、その言葉が嬉しくて、切なくて…。


 私はひとつ涙を零すと、自分からそっと口付けた。




 「…“約束”だよ…?
…離しちゃ、やだからね…?」



 「――うん。“約束”だ」






 重なり合う唇と、心臓の音。

 そして、あたたかな温もり…――。







 ――…不器用で、泣き虫な私達二人。



 今、やっと、本当にひとつになれた、そんな気がした…。





《第四章に続く》


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