8 やっべ! 莉緒、腹空かせてるよな! 複雑な心境に苛まれながらも、吾端は家で待つ莉緒を思い出し、慌てて買い物袋を掴むと公園を飛び出した。 あーもう、今日は特製親子丼にしようと思ってたのになぁ…。あれ、普通より工程が多いから時間が掛かるっつーのに…。 吾端は夜道を駆け抜けながら、帰ってからの手順を考え巡らす。 ――まずは、莉緒の生存確認だ。 あいつは『たくさん貰ったから当分は平気だ』なんて言ってたけど、目の前でぶっ倒れるのを見ちまった俺としては、無事な姿を見ないことには安心出来ない。 場合によっては、飯より先に俺の血をやることになるかもしれねーし。 ――そこまで考えて、不意に吾端は思い出してしまった――。 ――最初の朝、倒れた莉緒と交わした、熱い口付けを――。 柔らかく絡んでくる莉緒の熱い舌―― 乱れた美しい深紅の髪の手触り―― 花のような香りのする、莉緒の柔らかな肉体――。 そして――その莉緒を押し倒し、暴いた胸元に口付けた自分を―――。 「―――…ッ!!」 吾端は一気に赤面するのを感じた。 うわ…っ、俺…! 今更だけど…本っっ当ーに! 今更だけど…っ! 思い出してみると、めちゃくちゃエロいこと、あいつにしちまったんだ…!!! あまりの恥ずかしさにその場で頭を抱え座り込む吾端。 走ったせいか、はたまた思い出した行為のせいか、打楽器のように打ち乱れる心拍音が吾端を更に追い詰める。 [*前へ][次へ#] [戻る] |