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 ***


「……わあっ。もしかして、吾端さんの妹さんですかー?」


 時間にすれば、ほんの数秒の――けれど、体感的には数十分はあったかのように思えた沈黙を破ったのは、まどかの素っ頓狂な声だった。


「初めまして。あたし、生田まどかって言いますー」

「、あ、あの、まどかちゃ…」

「すごーい! やっぱり吾端さんの妹さんなだけあって、思った通り綺麗なひとー!」


 茫然とする莉緒を慌てて隠すようにドアの前に立ちはだかった吾端。

 しかし、それを押しのけんばかりに莉緒に近付いたまどかは、興奮気味でまくし立てた。


 ――まずい…すこぶるまずい。

 吾端の背中を冷たい汗が伝う。

 緊張と混乱で渇いた喉を鳴らして一瞬考えた後、吾端はまどかの肩を左手でやんわりと掴み、プリンの入った箱をさり気なく互いの身体の間に差し入れて行く手を阻んだ。


「ごめん、まどかちゃん。妹、病気がちですぐ具合悪くなるから、申し訳ないんだけどこの辺で…」


 わざと瞳を覗き込んで頼み込むように囁く吾端。それにまどかは頬を染めた。


「…あ、ご、ごめんなさい。あたしったら、つい興奮しちゃって……」


 恥ずかしそうに眉を下げ、まどかは俯く。

 吾端は更に、なるたけ優しい口調で、柔らかく笑んでまどかに告げた。


「今日は買い物に付き合ってくれて本当にありがとう。まどかちゃんのお蔭ですごく助かったよ。妹に付いてなくちゃいけないから送ってはいけないんだけど……これ、さっきのカフェのプリン。今日のお礼に、良かったら食べて」


 持っていたプリンの箱のひとつをまどかの手に持たせる。


「まどかちゃんの家、確かアンダーグレイの先の南台の方だったよね? 暗くなっちゃったから、出来るだけ明るい道を行った方がいいね。 そこの角を曲がるまで見ててあげるから、気を付けて帰るんだよ?」


 にっこり。

 最後に極上の笑顔を浮かべて締めくくった吾端を見上げ、まどかは目を丸くして頬を朱に染め上げた。

 

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あきゅろす。
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