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 「…こ、これっ! これ、渡しに来たんだよ」


 「…え?」


 無造作に掴んだそれを莉緒の頭上に翳す。

 解かれた腕から抜け出し、吾端の腹の上に跨ったまま上体を起き上がらせると、莉緒はその紙袋を手に取った。

 その姿にほっとした吾端は、ふと気付いて思わず息を呑んだ。


 …ちょ、この体勢、何かちょっと…、ヤバくねぇ…?

 内心で焦りを見せるも、莉緒は全く気付かない。

 せっかく元の雰囲気に戻りつつある現状を壊す訳にはいかず、吾端は黙ってひとりで頬を染めた。


 …つーか、散々こいつにやらしいことしてて、こんなことで動揺するとか、今更だよな…俺。


 心の中で、自嘲めいた乾いた苦笑を浮かべると、気を取り直して腹の上の莉緒に目を向ける。


 莉緒は吾端の内心での諸々には全く気付かず、ただただ大きな瞳を更に丸くして、手の中の紙袋を見詰めていた。


 「…こ、これ…、わ、私に…?」


 吾端の視線に気付いた莉緒は、泣きそうな顔で訊ねる。


 「他に誰が居るんだよ」


 小さく笑んで応えると、吾端は手を伸ばして莉緒の頬に指先だけで触れた。

 するりとした滑らかな白磁の肌が、淡く色付く。


 「…開けてみ?」


 柔らかく微笑みかけると、莉緒は更に頬を染め、こくりと頷いた。


 そっとそっと、大切な物を扱うように、莉緒は紙袋から包装されたそれを取り出す。

 一旦、両手で持ち直すと、小さく息を吸い込んでから掛けられたリボンをほどいていく。

 莉緒の細い指で丁寧に包装が解かれていく様を、吾端は儀式か何かのような気持ちで見詰めていた。


 「…わぁ…っ」


 やがて姿を現したそれに、莉緒は感嘆の声を上げた。


 「これ…和紙か…?」


 「うん。買い物してた時に目に付いて…。何となく、お前が好きそうな柄だなぁ…と思って」


 照れくさそうに鼻の頭を掻きながら言う吾端を、莉緒は驚いた顔で見詰めた。


 

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あきゅろす。
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