4 避けてたの、バレてたのか…!? 思わず息を呑み固まる私を、吾端は更にきつく抱き竦めると、溜め息混じりに囁いた。 「なんで…? 俺、何かしたか…?」 ――違う。吾端は悪くない。 でも、本当のことなど言える訳がない。 「…べ、別に、避けてなんか…」 「じゃあなんで泣いてたんだよ」 苦し紛れに零した呟きに、畳み掛けるように問い返され、私は言葉に詰まる。 「…莉緒」 耳元で甘く低い声で名前を囁かれ、躰が震えた。 吾端の唇が耳朶に触れる――。 …駄目だ、こんな…ッ。 「…やっ、…は、離せ、吾端…ッ」 必死で抵抗すると、吾端は観念したように躰を離した。 遠くなる温もりを寂しく思いながらも、ほっと安堵する。 そんな私を見て、吾端は苦しげに呟いた。 「…そんなに、俺に触れられるの、嫌なのか…」 思わず息を呑み、目を見開く。 反射的に見上げてしまった吾端の顔は、きつく眉根を寄せ、唇を引き結んだ苦悶の表情――。 …なんで、そんな表情を…? 「…ごめん」 見つめる私に小さく零した吾端の言葉に、胸を貫かれる。 違う。お前は悪くない…! けれど何も言えず、代わりに涙が頬を伝った。 「莉緒…」 そろりと、躊躇うように吾端の手が私の頬に触れ掛けて―― 結局、触れることなく下ろされた。 「…俺のせい、か…?」 涙の理由が、だろうか。 私はただ首を振る。 違う、と。 「…俺に触れられるのが嫌で、泣いてるわけじゃ…ないんだな…?」 切なげに訊ねられ、胸がぎゅっと締め付けられた。 躊躇いながらも、小さく頷く。 …嫌なわけではないのは…確かだから。ただ、触れられて困るのもまた事実なのだが…。 けれど、そんなこと、吾端には言えない――。 「…じゃあ…もう泣くなよ…」 [*前へ][次へ#] [戻る] |