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 避けてたの、バレてたのか…!?


 思わず息を呑み固まる私を、吾端は更にきつく抱き竦めると、溜め息混じりに囁いた。


 「なんで…? 俺、何かしたか…?」


 ――違う。吾端は悪くない。

 でも、本当のことなど言える訳がない。


 「…べ、別に、避けてなんか…」

 「じゃあなんで泣いてたんだよ」


 苦し紛れに零した呟きに、畳み掛けるように問い返され、私は言葉に詰まる。


 「…莉緒」


 耳元で甘く低い声で名前を囁かれ、躰が震えた。

 吾端の唇が耳朶に触れる――。


 …駄目だ、こんな…ッ。


 「…やっ、…は、離せ、吾端…ッ」


 必死で抵抗すると、吾端は観念したように躰を離した。

 遠くなる温もりを寂しく思いながらも、ほっと安堵する。

 そんな私を見て、吾端は苦しげに呟いた。



 「…そんなに、俺に触れられるの、嫌なのか…」


 思わず息を呑み、目を見開く。

 反射的に見上げてしまった吾端の顔は、きつく眉根を寄せ、唇を引き結んだ苦悶の表情――。


 …なんで、そんな表情を…?



 「…ごめん」


 見つめる私に小さく零した吾端の言葉に、胸を貫かれる。

 違う。お前は悪くない…!

 けれど何も言えず、代わりに涙が頬を伝った。


 「莉緒…」


 そろりと、躊躇うように吾端の手が私の頬に触れ掛けて――

 結局、触れることなく下ろされた。


 「…俺のせい、か…?」


 涙の理由が、だろうか。

 私はただ首を振る。

 違う、と。


 「…俺に触れられるのが嫌で、泣いてるわけじゃ…ないんだな…?」


 切なげに訊ねられ、胸がぎゅっと締め付けられた。

 躊躇いながらも、小さく頷く。

 …嫌なわけではないのは…確かだから。ただ、触れられて困るのもまた事実なのだが…。

 けれど、そんなこと、吾端には言えない――。



 「…じゃあ…もう泣くなよ…」


 

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