5 それを行うことに罪悪感が無い訳はない。 でもどう考えても、今の私に出来ることはこれしかない。 これまで通り、吾端と暮らして行く為には、どうしても必要なんだ。 ――あいつの中でさえ、私とのことを“無かったこと”に出来れば――。 そうすれば、たとえ私の中にあいつと触れ合った記憶が残っていても、二度と再び触れ合わなければ、きっと――私も以前の私に戻れるから。 ――いや、戻らなきゃいけないんだ。 ――吾端を好きになる前の私に――。 「……っ…――」 込み上げる涙と嗚咽に、私は手のひらで顔を覆う。 ……エゴだってことは解ってる。 本当はこんなことすべきじゃないってことも。 する必要がなければ、どんなにいいか、とも――。 それでも私はやらなければならない。 元々、吾端には必要無かった出来事なんだ。 …だから、許して欲しい――。 私は涙を拭くと、箸を取って弁当箱に突き刺した。 美味しい筈の吾端の弁当は、何の味も判らないまま、私の胃に収まった――。 食事を終え、身体が元の状態へと幾らか回復すると、私はまどかから受け取った紙袋を開けた。 中には可愛いくラッピングされた丸い容器に入った、手作りだというゼリーが入っていた。 しばし考え、私はそれを処分した。 とてもじゃないが、食べる気にはなれなかった。 「………彼女が悪い訳じゃないんだけどな」 小さく落とした呟きは、禍々しい程に自虐的だった。 ―――カタン… [*前へ][次へ#] [戻る] |