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紙、鉛筆、小人。
例えば幻覚が見え始めること。
俺は作家志望の男である。

だがまるで芽が出なくて、小遣い稼ぎに始めた占い師が本業になりつつある。
しかし、それでもまだ食っていけなくて最近は専ら姉に頼まれた仕事で稼いでいた。
姉はキャリアウーマンで金は持っている。
ただ、その姉には一つ難点があった。
腐女子なのである。
しかも三次元男に全く興味を持てない程の。

それで最近俺が姉に頼まれる仕事というのは、姉の為に二次創作の夢小説を書くことだった。
ジャンルは戦国バサラ。
ゲームも俺用のをくれたし、小説を書いてお金を貰えるんだから姉専属の小説家になったと思えば夢に一歩近づけた気分で最初のうちは良かったんだが、段々ときついということが分かってきた。

何故なら姉の言う萌えがわからない。
俺の考える萌えをぶち込んだ小説を書いたところ、「皆もっと男らしい」と言われ、じゃあ格好良くしてやれとバトルシーン豊富なアクション物にしたら「面白いけど萌えない」。
意外と奥が深い。
とか言ってる場合じゃない。
出来た作品の完成度で報酬が変わって来るので、家賃払って財布空っぽの俺にとっては死活問題である。

「だああ……ヤベーどうしよ。いっそキャラが来てくれたら楽なのに」

まだまだ白いノートに「政宗があらわれた!」と書きこんでみる。
……先が続かない。

「はあぁー……」

大きな溜め息をついて机に頭を打ちつける。
強く打ち過ぎたのか星が飛ぶ。

そして、目の前が真っ白になった。




「……おい」
「……」
「……Get up!」

誰かに髪を強く引かれて目を覚ます。
俺は一人暮らしだし……大家さんか?
机から頭を持ち上げる。



「I did it!」

「……は?」

まだ俺は寝てるのか?

「やっと起きたな!ったく図体がでかい分、いびきが酷くてこっちは散々だったぜ!」
「失礼ですが貴方はどちら様で?」
「俺か?俺は伊達、政宗だ!しっかりテメェの胸に刻んどきな!」

手乗りサイズの彼はそう答えた。

「へーそうなんだ、現代の服を着てるってことは学パロかなーあはは……って、え!なんだこれ幻覚かそうか医者行こう駄目だ金無い」

とりあえずこのネタで姉の夢小説書こうか。

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あきゅろす。
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