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アンサンブルメロディ
レン視点
「 レンレン!わたしをパートナーにしてよー!」
「あ、ずるーい、わたしもー!」


オレの予想通りレディたちがオレのパートナーになりたがって争いはじめた。

「ごめんね、君たちには悪いけどもう彼女と約束しちゃったんだ。パートナーになるってね」

そう言って彼女……ちひろの肩を抱き寄せる。
そして目配せを送った。

話を合わせてという念を込めて。

「…………ええ。彼と説明会のときに約束したのです。不満ならば作曲で勝負しましょう」

果たして彼女はオレに話を合わせてくれた。
ひょっとしたら彼女もオレに気があるのかもしれない。
そして、相当の自信家だ。なんて、彼女がオレに気があるのかもしれないと思ったオレが言えたことじゃないけどね。

彼女に気圧されたレディたちはすごすごと引き下がる。

即興であのトロンボーンの曲を作った彼女。
もし仮に即興だというのが嘘だったとしてもあの曲は素晴らしかった。
オレを囲うレディたちもこの学園で仮にも音楽の道を志す人間だ。
彼女と作曲で勝負したら自分たちに分が悪いことも分かっているのだろう。

ちひろを連れて、レディたちから離れたあとオレは彼女に小声で囁いた。

「ありがとう、レディ。恩に着るよ」
「では早速恩返ししてください」
「何をお望みかな」
「財布を忘れたので昼を奢ってください」

予想していたどの要求も外れて、まるでオレに興味が無さそうに言った彼女に思わずオレは吹き出した。

「そんなのでいいの?もっとすごいこともしてあげられるよ?」
「あなたがぼんぼんでわたしの昼食代くらいは持っているのだということは分かっているのです。おとなしく奢ってください」
「神宮寺を知っていてなおそんな要求だなんて謙虚だね」
「昼食代をたかっているので謙虚ではありません」
「くくっ、確かにそうだ」

面白いレディがパートナーになったな。
なんだか嫌々入ったこの学園だが、楽しくなりそうだ。



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