[通常モード] [URL送信]

噛み合わぬ花(元親)
俺を、恨んでいますか。
海斗が居なくなってから一日をボーッと過ごすことが多くなった。
絡繰を作ろうとしてもいい案がサッパリ思いつかない。


そんなある日、毛利から文書が来た。

毛利、と聞いただけで腹を立て破り捨てようとした俺を、野郎共が必死で宥めて中身を読むよう急かす。
渋々それを開いた俺は、目を疑った。

そこには、先の戦闘への詫びと、同盟の申し入れが書いてあったのだ。
しかもその同盟の条件が、お互いに妥協、いや寧ろ毛利の方が多く妥協するような内容だった。

あの戦闘で痛手を負ったウチには好条件すぎるこの同盟。
だが、相手はあの毛利だ。油断ならない。


俺はすぐに毛利の真意を確かめるべく、奴の城へと向かった。

そこで見たのは、空っぽじゃなくなった毛利だった。
本人は冷たい顔を取り繕ってるが周りの奴らを見ればわかる。
相変わらず捨て駒と呼ばれているようだが、毛利を中心としたその部下たちは確かに空気が緩んでいた。
そんな様子に驚きながらも、毛利に同盟の件について聞く。

「毛利ィ!いきなりなんだ、この提案は。何が目的だ」
「我の目的は初めから変わらぬ。叡智による安岐と毛利の末永い繁栄。それのみよ」
毛利がそう言った瞬間、その一番近い所に居た側近が口端を吊り上げた。
疑問を覚えたがとりあえず一旦置いておいて、毛利に反論する。

「つってもおめぇ、今までは戦しまくってただろうがよお」
「……別に貴様が理解出来るとは思っておらぬ。ただ、我は」
「……?」
「……平穏が、欲しくなったのだ」

耳を疑った。
そんな俺を余所に、毛利はさっきの側近に目を向けるとフワリと笑いかけた。
今度は目を疑った。
しかし俺は、惑わされまいと首を振ると毛利に突っ掛かる。

「だが、毛利!俺ァ、こないだの仕打ち、まだ許してないぜ?そんなんで同盟が成り立つってぇのかい?」
「……被害の殆どは貴様が呆けていたからであろう?」
「……ッ!」

毛利の言う通りだった。
俺が、海斗を失った衝撃で使い物にならなくなったのが、甚大な被害を呼んだのだ。
ギリッと歯を食いしばり拳を強く握りしめる。
それに。
海斗を失ったのも、俺の過信のせいだ。
一言も言い返せない。
だが、そんな俺を見た毛利は、今まで見たことがないような表情をして口を開いた。

「……貴様の、愛した男が死んだそうだな」
「――……」
「悪かったなぞとは申さぬ。だが……」

じっと側近の男を見つめながら毛利は言葉を続ける。

「それは……計り知れぬ、辛さであろうな」

それを聞いた側近の男は益々笑みを深くする。

嗚呼、と俺は得心した。
毛利も恋をしているのだ。
それが、毛利軍全体の雰囲気が変わった理由だろう。
恐らく相手はあの側近。


「分かった。同盟は成立だ。……毛利。アンタは、なくすなよ」
「フン、貴様に言われずとも」



同盟を提案した真の理由はあの側近のためなんだろうな。

俺ももっと海斗のことを考えりゃ良かったのに。

馬鹿だなぁ。



こうして隣国は平和になった。
航海する鬼は海に取り残された。


[*前へ][次へ#]

3/4ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!