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キャパシティオーバー(男体化攻め寄り主人公夢)
巳年もグダグダに始めてみます。
「やっぱりお正月は、炬燵に蜜柑だね」

「そう言って貴様は冬が始まってからほとんど炬燵で過ごしているじゃないか!」

そう言ってプリプリ怒っているかすがさんに向かって、あーんと口を開けてみる。すると、

「ッ!……全く、仕方のない奴だな!これっきりだからな!分かったか!」

とか言いながら剥いた蜜柑を口に放り込んでくれた。優しい。

「ふふ、なかがよいのですね」
「謙信様!そんなことはございません!こいつがあまりにも情けないから世話をしてやっているだけで……!」
「てれなくともよいのですよ」

謙信さまがそういうとかすがさんがキッとこちらを睨む。人の恋路を邪魔する奴はなんとやらと慶次君あたりに怒られそうだ。

「其れにしても謙信さままで来てくれると思わなかった。態々来てくれたのに騒がしくて済まないね」
「いえ、よいのです。他ならぬそなたに逢うことが叶うのならば、この程度、やすきこと。それにこれもまた、毘沙門天の導き……。縁あってのことでしょう」
「戦神の導きと言われると確かに納得のいく顔触れでは有るね」

そう言った僕に対し、ふふ、と笑って返した謙信さまを見て、アァーッと叫びながらかすがさんが倒れる。
生で見ると目のやり場に困るそんなかすがさんから目を逸らし、「騒がしく」している方へと目を向けた。


目を向けた方、急遽用意したもう一つの炬燵とその周りに凄く豪華な顔触れが揃っている。
まず、炬燵に入っているのが魔王の信長君と覇王の秀吉君、あと、ちゃっかり光秀君。
そして秀吉君のやや後ろにいるのが半兵衛君、さらに後ろに三成君、刑部君。
なんだか戦が始まりそうな顔触れである。
だが、まあ大丈夫だろう。

「貴様が……貴様が織田信長!秀吉様の覇道を阻む輩かァ!」
「その炬燵から出て行きたまえ。それは秀吉が入るための物だ」
三成君が叫び、半兵衛君が憤る。

「ぬぅ。我の手では斯様に小さき果実は剥けぬ。吉継、我のために剥いてはくれぬか」
「……われに剥かせるとは、流石太閤。三成の信仰も分かるというものよ。ヒヒッ」
秀吉君が蜜柑を潰し、刑部君が呟く。

「ム……緋呂!蜜柑がもう無いわ。次を用意せよ」
「ああ……っ、ああっ、ぬくいですねぇ」
信長君が寛ぎ、光秀君が身悶える。

カオスだった。特に最後、意味が分からん。炬燵でぬくくなって変態に拍車が掛かるって何事だ。嬌声を挙げるのはかすがさんだけでいい。
取り敢えず信長君たちの為に蜜柑を追加で持ってきてから炬燵に入り直すと謙信さまがのほほんと呟く。

「なかのよいのはよきことですね」
「そうだね。本来敵の武将同士が蜜柑と炬燵でお正月を過ごすなんて奇跡の様だね。良いことだ」
「それは緋呂、貴様がいるからだ。他の場所ではこうはならない」

そんなかすがさんの言葉に首を傾げると、いつから聞いていたのか半兵衛君に溜息を吐かれた。

「君は理解していないようだけれど、君といると恐ろしい心理的効果があるんだ」
「そうよなァ。三成には効いておらぬようだが、緋呂はまっこと恐ろしい男よ。味方も敵も弛みきって敵わぬ。ぬしの才能にはわれも脱帽よ、ダツボウ」
「僕といると弛むのか」

そう聞くといつの間にか聞いていたらしい、三成君以外の全員がうんうんと頷く。アニメだったら「今、武将たちの心は一つになった」とかナレーションが入りそうなくらいシンクロしていた。

「そうだね。もっと解りやすく言うんであれば、緋呂くんがいると……」
「僕が居ると?」


「……――働きたくなくなる」

あまりに衝撃の一言に僕は絶句した。
なに、そのニートみたいな宣言。いやそう言う僕が現在戦国ニート生活真っ最中なんだけど。
半兵衛君の「働きたくなくなる」発言に、信長君が「そうそう!」と言わんばかりに頷いているのが恐ろしい。
そしてそんな周りの様子をゆっくりと見回した謙信さまも呟く。

「そうですね。そなたの居る場は時がおだやかにながれゆく……。同じ不香の花をまといこそすれ、かくもあたたかく……。そなたならば軍神のねむりしのち、わたくしのかすがを委ねることも、また……」
「ああ、謙信様!かすがは、かすがは、つるぎなき先にただのこの身となっても、いつでもあなたさまのおそばに!」
「ふふ、その想いしかと受け止めましょう」

人をダシにしてイチャつかないで欲しい。……っていうか、なんかこの屋敷への居候計画を組まれている気がするのだが、これも「働きたくなくなる」効果なのか。恐ろしい。
恐怖に思わず体をぶるりと震わせる。

「おやおや、凍土の春はあなたには寒すぎたようですねぇ。ほら……こちらに来て私の上に乗って下さい」

突然、耳元に囁かれて振り返ると、光秀君が奇妙な形に身をよじって息が掛かるくらい近くにいた。

「じゃあ……お正月だし遠慮なく光秀君の膝に座らせてもらうとしよう」

炬燵から出て光秀君の膝に座ると、嬉しいのか何なのか彼は変態らしく身をくねらせた。それが無ければ意外に座り心地の好い椅子である。

「緋呂ッ!何をしている!何が正月だし、だッ!そんなところに座るなッ!」

今の今まで秀吉君にベッタリだった三成君がいきなり僕に叫び、こちらに来て、ぐいぐい僕の服を引っ張った。

「なんだい、三成君。雑煮が食べたいなら、」
「違うッ!その変態から退けッ!いっそのことその輩を何処か遠くに捨ててこいッ!」

捨ててこいって……酷いなぁ。

「酷いですねぇ。私は緋呂の椅子になっているだけですよ」
「そうだね、光秀君は今、僕の椅子だ」
「ッ!ヒヒッヒヒッヒーッ!!死神がぬしの椅子か!ヒヒッ」

何故か刑部君に受けてしまった。


「ぬぅ……光秀が椅子、であるか。ならば余の膝でもよかろう。緋呂、来い」
「ダメですよ、信長公。緋呂の椅子は私です」
「む。緋呂、我の膝も開いておるぞ。魔王や死神など止めておけ」
「秀吉!?何を言っているんだい!?さっき飲んだ酒で酔っ払ったのかい!?」
「秀吉様!秀吉様が膝を貸すくらいならばこの三成が!」
「ヒヒッヒヒッやれおかしなことになった、ヒヒッ」
「このようにおだやかなる時もまた尊きもの……すばらしきかな」
「ああっ謙信様ぁあっ!」



「……また今年もグダグダになってしまったね。まあ、皆、今年もよろしく」

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