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キャパシティオーバー(男体化攻め寄り主人公夢)
ぐだぐだな感じで辰年を始めてみます

「猫か。赦す。余の下へ参れ」

何となく嬉しそうな信長君が縁側に座ったまま手を伸ばすと虎はその足元に寄って来た。

「僕は虎をこんなに間近で見たのは初めてだね。噛まないのかい」
「噛むぞ!だけどお前は噛まないよう言っといたから大丈夫だ!」

広綱君がそう言ってくれたので、信長君にもふもふされている虎にそっと触る。

「虎の毛も意外に柔らかいのだね」
「毎日皆で手入れしているからな!」
「よき、働きよ。誉めて遣わす。……緋呂、貴様も近う寄れ」

言われるままにもっと信長君に寄ると彼の膝の間に座らされた。蘭丸君に見られたら殺されそうなポジションである。

「……って、ちょっと待ったァアッ!宇都宮の旦那と緋呂さんはともかく、魔王の旦那何やってんの!?魔王が何普通に和んじゃってるの!?おかしいでしょうが!」
「なんでやねん!!」
「ここでそれ!?」

信長君の振り下ろしたハリセンを影になって避けた佐助君が、ツッコミながら広綱君の後ろに現れた。

「何がおかしいんだ?俺の虎がどうかしたのか?」
「アンタも何平然としてんの!……っていうか何で虎を連れて来たわけ!?今年は寅年じゃなくて辰年!辰!竜なの、分かる!?」

まくし立てる佐助君に僕は「然し」と異論を唱える。

「竜なんか居ないから連れて来られないじゃあないか」
「居るでしょ!独眼竜が!俺様あいつのこと嫌いだけどここまで無視とか可哀相な扱いされてると不憫に思えてくるよ!?」
「自分みたいで?」
「そう!……ってちっがーう!俺様の話じゃないでしょ今は!」

バンバン広綱君の頭を叩きながら佐助君が叫んだ。
あーあ、広綱君がこれ以上おばかになったらどうするんだよ。叩かれている広綱君が平気そうな顔してるから大した強さじゃなさそうだが、心配だ。

「ハッ、笑わせる。あれは地を這うだけの岩蜥蜴ぞ。蛇にも足りぬ。天を舞う資格など無いわ!」
「そんなこと言ってるからただのオッサンとか言われるんでしょーが!」
「なんでやねん!」
「だからそれ使い所おかしい!」

いつの間にか僕から離れていた信長君にまたハリセンで斬られそうになった佐助君は、今度は僕が撫でている虎の上に現れた。
……のだが。
間を置かずに生えてきた黒い手に襲われて、すぐまた影になって避けていた。

「上に乗っちゃ……ダメ。かわいそうに、いたかったね。おいでおいで、市が緋呂と一緒に撫でてあげる」

ゆらゆら現れたお市さんが僕の隣に座って、虎をたくさんの黒い手と一緒に撫で始める。
……心做しか虎が怯えている気が……。

「魔王の妹まで居たの!?ありえな過ぎるでしょ!」
「ッ……ひどい……!市のこと、ありえないって……!あなたも市を、いじめるのね……」
「佐助君、お市さんが可哀相だよ。いじめないでくれ」
「いや緋呂さん、今まさに俺様の方がいじめられてるからね!?」

確かにハリセン持った信長君と地面から生える無数の黒い手が佐助君を狙っているが、全部避け切っているみたいだし別に大丈夫だろう。
そう考えてとりあえず泣いているお市さんの頭を撫でて宥める。
泣いているところに長政君が来ちゃったら泣かせた佐助君は削除、見ていた僕も成敗されちゃうからね。


「……ところで結局、竜はどうなったんだ?」

首を大きく傾げた広綱君がお市さんとは逆側の僕の隣に腰掛けながら聞いてきた。

「……僕も竜と云えば政宗君とは思ったのだがね。皆が来るよりも前に来た政宗君にはアレになって貰ってしまったんだ」
「……アレ?」

信長君や佐助君も動きを止めて注目しているのを確認して、僕は頭の上に手を軽く挙げて、指を鳴らす。

そうすると同時に、僕の真後ろにある障子がスパンと開いた。

「ハハハハハ……驚いたかね?正月のめでたい席だ、楽しみ賃は結構だよ。私からの新年の挨拶だ」
「んー!ん゛ん゛ー!」

何食わぬ笑顔をして立っている久秀君と、


裸にリボンをぐるぐる巻かれて、ついでに口も塞がれて転がっている政宗君が、障子が開いたことで顕わになる。


「リボンで巻かれた政宗君……つまり正月のおせちには欠かせない、伊達巻きだよ!久秀君が計画して僕が用意したんだ」
「…………フフフフフフ、フハハハハハハッ……!なんでやねんっ!!」

高笑いした信長君にパシィッという小気味よい音を立てて額をハリセンで叩かれ、思わず僕も「あはは」と笑い出してしまう。
するとお市さんまで「兄様も緋呂も楽しそう……フフフ、フハハハ!」と笑いだした。
彼女こそ楽しそうで何よりだ。

そうやって三人で笑っていると固まっていた佐助君が急に声をあげる。

「見えそうで見えない……!いや、独眼竜のなんて見たくないけど!」
「……そんな所に目をやるとは、卿もなかなかに好き者だな」
「いやだって見たくなくても見えそうな格好だろ!」

そんな風に話す佐助君と久秀君が何のことを言っているのか初め分からなかったが、彼らの視線が政宗君の下半身に向かっているのを見て気づいた。

「ああ……それなら大丈夫。イケメンのなら基本はポロリしない筈だ。ねぇ久秀君」
「そうだな。まぁ冒頭からそういった場面に入る物も多いがね、私はあまり好きではないな」

なんか久秀君なら応えてくれそうだと思って話を振ると応えてくれた。
微妙に想像している物が僕と違いそうだが、瑣末瑣末。

「緋呂さんも松永も何訳分かんないこと言ってんの!?っていうか緋呂さんがあの細長い布、あんなギリギリに巻いたんでしょーが!何考えてんの!?」
「大丈夫大丈夫。『この伊達巻きは番組後、緋呂が美味しく頂きました』ってテロップが入るから」
「それの何が大丈夫なの!?えっ、やだよ、……独眼竜より俺様の方が美味しいよ!?」

僕の胸倉をつかんでそう言った佐助君は可愛かった。あとで政宗君と同じラッピングをしてあげよう。

「うーん、佐助君の方が美味しいなら佐助君を食べようかな」
「では私は緋呂を食べるとしよう」
「松永ァ、何を言うかァ。緋呂は濃と並べて余の後ろに置くが道理ぞ」
「兄様、市も仲良くしていいよね……?」
「よく分からなかったけど、俺も混ざるぞ!」
「ん゛ーん゛ーっ!」

「独眼竜が不憫……!っていうか何なの一体!!いつもより収集つかないんだけど!?」

佐助君が頭を抱えださんばかりに叫んだ。
僕も概ね同意である。


「そうだ、佐助君」
「何!?」
「あけましておめでとう。今年も宜しくやってくれ」


「……うん。……よろしく、緋呂さん」







(この伊達巻きは番組後、緋呂には美味しく頂いて貰えませんでした)

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