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藍屋 秋斉
最終話
熱を放っていた秋斉さんの肌がひんやりした体温に戻ってゆく…いつもの…何気に大好きな気持ちの良い秋斉さんの体温に…
ただゆっくりと温もりの混じる安堵と期待の高鳴りを潜ませながら肌を寄せ合うのが、切ない位に嬉しくて…嬉しくて…

園生『秋斉さんの肌って…ひんやりとしてて気持ちが良いですよね』

秋斉『…あんさんを見つけた時は冷や汗が滲んどったさかいに…心の臓が止まる思いやった…』

園生『っ!…ほ…本当にごめんなさい…』
秋斉『ハハ…いじめ過ぎたかいな?悪うおしたな』
本当に申し訳なくて俯いてしまう私の背中を秋斉さんは優しく撫でながら大事そうにクスクス笑みをこぼしてもう一度覗き込む

秋斉『もうこの話はしまいにしまひょ、それよりも園生はんの心の為の休みやさかい何をしましょか?』

そんな優しい言葉を掛けてくれる秋斉さんを前にして私が考えられる答えなんてたった1つしか無い
普段は置屋の楼主とそこに勤める遊女の私…
それでも秘密を分け合うようにひっそりと触れる肌の感触や甘い声色の紡ぎ…
愛しくて瞳を覗き愛し過ぎて熱く唇を潤し、いけないと解っていても惹きつけて止まない互いの香りに…

園生『…私は秋斉さんとこうして一緒に居られるだけで幸せですから』

秋斉『………』

園生『だからあの…明日の夕方までずっとこのままだと確かに嬉しいんですが、それじゃあ大事な秋斉さんのお仕事の邪魔にもなっちゃいますしその…せめて朝までお休みを頂けるなら…あ…朝までずっと…このまま…貴方の傍に居させてくださればそれが一番嬉しいです』

ドキドキと胸に喜びの音色を響かせ火照ったままの目元に少しの恥ずかしさを織り交ぜ、抱きしめてくれている秋斉さんを見上げてみる

秋斉『……あかん』

園生『…えっ?!』

秋斉『…あかんわ園生はん…そないに可愛いらしい事云われたらいつもの「楼主、藍屋秋斉」の能面が剥がれ落ちてしまうやないか』

園生『…っ?!…あ…あの?!…えっと…』

きっと他の人達は秋斉さんのこんな顔は知らない…いつもよりも照れくさそうに下がった眉尻や、すらっとしたラインの頬にうっすらと灯る赤み、置屋の主人では無くただの藍屋秋斉として想いを寄せてくれる表情を

秋斉『いつも一生懸命で明るくて笑顔の絶えないおしとやかな娘が、わての前でだけ色気の香る目元や唇を見せる…こないに嬉しい事をされたらたまらんやろ』

園生『?!!…』

照れくさそうにしていたと思ったら、ふっとその表情を艶っぽいゴクリとする男性の物に替え息も出来ない程の深い口付けを落とされていた

園生『フッ!…ん…あ…秋?!』

秋斉『…しっ…何も言わんと黙って溺れとき』

余りに熱い口付けに焦る私に秋斉さんは熟成され過ぎた色気を称えた目元でクスッと笑いすぐさままた唇を奪われてしまう

互いの皮膚の滑らかさが代わる代わる唇を行き来しながら吐息を送り込む

柔らかな感触から伝わる激しい熱が角度を変えながら重なる度にクラクラと愛しい人の熱に目眩がする

秋斉『…園生はんの唇は甘くてやらかいな…全部食べてしまいたいくらいや』

園生『…んっ…ハァ…秋斉…さ…んっ』

柔らかな唇をついばむ毎に互いの息が重なり苦しい位に頭を真っ白にさせる

秋斉『園生が好きや…愛しくて愛しくてたまらん…』

口付けの最中にも首筋から耳のラインをなまめかしく辿る指先が愛を語る音色と共に身体の中まで浸透してゆき、目頭が熱く涙ぐんでしまう

園生『私も…んっ…私も秋斉さんが…ハァ…大好きです貴方だけが…』

賑やかな宵町の喧騒すらも耳の縁を掠る位遠くで奏でているように、ジンジンと焦がす動悸が身体中を充満していった

何度か交わした口付けより激しく狂おしい感情

その腕に抱き締められる度にどんどんどんどんと膨れ上がる好きの気持ち

あんな事が在って奇しくも秋斉さんからのいたわりや優しさ愛情をはっきりと理解した今は、好きだなんて言葉じゃ伝えきれない想いが制御する間も無く溢れ出して…

秋斉さんへの想いを口にしたその唇で、自分でもびっくりする位素直に愛を口付けに乗せ返していた

秋斉『…?!』

珍しく激しい秋斉さんにドキドキしながらも、私も背中に回した手を恐る恐るすらりとした首筋に滑らせ絡ませてみると、秋斉さんの瞳がトクンと見開かれる

秋斉『………フッ…あんさんには驚かされっぱなしや参った』

園生『!…わ…私はただ?!…どうしたら秋…秋斉さんに気持ちが伝わるかなって?!…』

秋斉『最初にゆうたやろ?何も言わんと溺れといてと…そないしたらこれまた大胆な…いや本当にあかんよって…』

園生『えっ?』

秋斉さんはほとほと困ったように、それでもどこか嬉しそうに笑いながら自分の目前を手のひらで覆い私の唇をなぞりながら呟いた

秋斉『これ以上園生はんの気持ちをぶつけられたら置屋の主人の威厳やら…いや…そうや無い…あんさんを大事にしたいと思うとる一人の男として早まって傷つけてしまいそうや…だから今は耐えるさかいにこれ以上かいらしいのは堪忍え』

園生『……秋斉さん』

肩を下げておどけてみせるけれど、その思い遣りはじんじんと私を内側から満たしてくれた

それに吊られて私も少し眉尻をさげた笑みで、高まり過ぎた高鳴りが緩やかな心地の良いときめきに変わると同時に少しホッと…少し残念かな…と秋斉さんと同時に笑い合う

園生『ほ…本当は私もどきどきし過ぎて心臓が飛び出ちゃうかと思ってました』

秋斉『ハハ…堪忍え園生はん』

それでもやっぱりたまにしか訪れない二人だけの時間を埋めるように、涼しげな香りのする秋斉さんの胸元に寄りかかったまま、取り留めのない話や甘い会話を堪能して私達の夜は更けて行ったのだった

―終わり―

【あとがき】

いや…だから…甘過ぎだれあなた達?!って位淡いし甘い(泣)(笑)
艶がはハマり過ぎて大好物だけど、如何せん根っからのエロオヤジなあちきにゃ〜書くのは辛い!何が?ってそりゃ奥様方あ〜た…気を付けにゃ〜簡単に目まぐるしい官能小説に早変わりしちまうからですたい(泣)(笑)
(゜∇゜;)

まあ、甘くて寸止めだから『んんっ〜!(≧ε≦)!』って読んでてなるんだろうけどね(笑)

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