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藍屋 秋斉
A
動揺を誤魔化すには丁度良い程今日は何故か忙しく、あの日と夢を忘れて私はせわしなく仕事をこなしてゆく

結局あの後、お稽古を終えると至って何も無かったかのように秋斉さんからお使いを頼まれ、島原からは外れた酒屋さんで調理用のお酒を買い出し長い置屋までの道のりを足早に戻っている

園生『はあ…結構遠いんだよねこれが…嫌だなぁ…早く帰り…』

前にも何度かお使いに来てはいた場所だったが、本当のところ今は余り来たくは無い場所だった









………なのに…急にゴツッとした何かに口と胸を鷲掴みにされ私の視界から町の灯火が遠くなった

一瞬何が起きたのか解らなかったけれど、鈍く走る背中の痛みに目を見開くとそこには以前見た事の在る男達の姿が映り…自分の体を1人の大柄な男の手が押さえつけていたのだ

園生『…?!んんっ?!』
男『おっと…また出逢っちまったなぁ可愛子ちゃんよ…この間の続きと…いこうじゃねぇか』
園生『?!…(あの時の?!ぁっ…何で?!)』
男2『ひゃはは!かわいそうによぅ涙ぐんじまってらあな!綺麗なおべべも良い具合にはだけちまって…艶めかしい柔肌が見えそうだぜぇ!』
園生『んんっ?!んー!!(どうして?!…またこの人たちが?!)』
男『静かにしろっつってんのが分かんねーのかこの牝餓鬼が!』
園生『?!!…ッ…フゥ!…』

左頬に放たれた鋭い痛みが甲高い破裂音と共に私の脳内にまで襲いかかる

蘇る恐怖に私はただ涙をボロボロこぼし、寒気のする体を強ばらせる事しか出来ないでいた

男『へへ…それでいいんだぜお嬢ちゃんよぅ…この間は壬生浪の鬼に邪魔されちまったが今日という今日はその白い肌を舐めさせて貰うぜ』
園生(…嫌!…止め…誰か!…誰か?!…助けて!!!)

そう…あの時はもう駄目って時に、たまたま見回りをしていた土方さんが物音に気付いてくれて助けに飛び込んでくれていた

幸い怪我も無く私が秋斉さんに心配かけたく無いからと黙っていて貰うように頼んだけれど、土方さんは黙っていてくれはしたが『お前をそんなめに合わせた代償だ』とかなり痛めつけてくれた筈なのに……混乱する最中目だけで男達を見ると、確かにまだ腫れ上がった皮膚や包帯やらの痛々しい名残は見受けられる

…何でまた…私なの?!
私が何かしたの?私の日頃の行いが悪かったの?
男『…んじゃまあ…頂くとするか』
園生『…っ!!』
震える恐怖に嗚咽を堪えきれずただ目一杯唇を噛み締めたその時…




??『…おや…こんな日の高ううちから何や…阿呆な輩が居てはる思うたら…………鬼の壬生浪に怒りをかってはった悪等共やおまへんか』
男『…誰だ貴様?』
??『…それより…そないいたいけなおなごを力ずくで手込めにしはるなんて…あり得へんやろう』

今度こそもう駄目なんだと思っていると突然…聴き慣れた静かな声が男達の後ろから降って来る

絶対に…聴き間違う筈の無い人の声

園生『?!…あ…き…秋斉さ…?!』

声を発した瞬間、一瞬抑えつけられる力が弱まったのを見逃さず、体を前のめりに起き上がらせようとするけど…

男『おっと…勝手に起きちゃイケねぇなぁお嬢ちゃん』

間髪入れず元の状態に押し戻す
…と同時に少しだけはだけていた着物の襟元からはあの日無理やり付けられた吸い付かれた跡が未だうっすら残っていたのが露わになってしまった

男『まだ残ってやがったのか…まるで名残惜しいように俺の唇を待ち望んでたかのようじゃねぇか』
園生『やっ?!…嫌……い…』

その跡を無骨な指がなぞりだし、これでもかという程の悲鳴が口から溢れだした

園生『嫌あぁぁ!!!』


―続く―

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あきゅろす。
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