ゼフサン
10.3/2サン誕
【貴方に逢えて…】
目指す世界は奇跡の海オールブルー
色とりどりの魚達が舞い踊る海
無限に広がる夢の海
いつか必ず辿り着きたいと胸に秘め突き進んで来たコックの道
この船バラティエで過ごす日々は慌ただしくも毎日なんだかんだと充実はしている
その中でも毎年恒例…誕生パーティー
毎回パティやらカルネ、他の野郎共も我こそNo.1コックだと云わんばかりに盛大にきらびやかなアートを施したディナーやケーキを競って披露している
あのジジィ迄もが似合わねぇ顔で少なからずともご馳走を作って振る舞っていたのに、今年の俺の誕生パーティーには何故か料理の一品も作っていやがら無かった
『…んでだよ?!』
パーティーの後、済ませた後始末を終え甲板で一服をしながら思うは、今年初めて自分を祝う料理や言葉がゼフからひとつも無かった事に苛立ちを抱えて居るサンジ
火の乏し尽きたチリチリとした煙草の音を合図に苛立ちが頂点に達し、加えていた煙草を床に投げ付けガシガシと踏みつけると勢い良く海の水面へ蹴り飛ばしてみた
『クソったれ…』
…カタンッ…
サンジが小さな声で悪態を着いていると、船の裏側に在るキッチンの方から扉の開く物音が聞こえ、その音の主がカツカツと甲板を鳴らしながら此方に向かってやって来た
『……』
『……』
音の主がサンジの隣に立ち縁に背中をもたげ無言のまま一息着くと、むしゃくしゃしていたサンジがこれ見よがしにまた悪態を着いたのだ
『…ッケ!…何しに来てんだよジジィ?…まさか忘れて悪かったなんて謝りにで…』
その時…温かな湯気と共にフワッと香草と海が香るスープが入ったカップをゼフからサンジの左手に渡される
『?…ジジィ……これ?!』
『毎年毎年…自分のパーティーだってのに後始末迄やらされるハメになってるだろう』
『?そりゃたまたま毎回パティの野郎達が蜂の子みてぇに一気に逃げやがるから仕方無く…それとこれと何の意味が…』
『テメェの生まれやがった日ってのは寒くて敵わん…相変わらず今年も寒むいし暖まる代物が良いだろうって親心で作ってやったんだが飲まねぇのかチビナス?』
『…?!飲む!飲むって!いるってんだろクソジジィ!』
あたふたと渡されたスープを口元に運び一口スプーンで飲み込むと、ハーブのタイムとローズマリーの爽やかな香りや魚介類の深い海の匂いが溶け込んだ、甘く微かな酸味が混じる柔らかく温かいトマトのブイヤベースだった
暫し寒空の中で受け取った温かなスープをサンジはゆっくりゆっくり…ひとつひとつ味や香りを体で堪能する様に口の中へ運ぶ
一口入れれば海が広がり
一口飲み込めば無限の愛が広がる
きっと、一番の労い
きっと、一番甘く柔らかな愛情
最後の一口を残しひとまずカップから口を離すと、サンジは静かにフゥ…と息を洩らし横からゼフの顔を覗き込みひと言言葉を掛ける
『…なぁ…ジジィ?…最後の一口いらねぇ?』
『あ?別に良いが?』
『んじゃほら…』
残りのスープをスプーンで救いゼフの口に含ませると、サンジはそのまま口元に唇を重ねた
味わうは、ブイヤベースの深い旨味…そこにひとつ追加で香る隠し味
それは…ゼフの香り
きっと、それが一番気持ち込み上げる愛のスパイス
―終わり―
【あとがき】
今年もサン誕出来た〜(^o^)
なんだかかなり甘くなりやしたがたまにはいいかな〜と(≧ε≦)
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