煙炎
止まらない吐息−濡れる肌を抱き締めて@
先ずローグダウンに着いたのはこの辺り一辺を統括するスモーカーだった
たしぎを引き戻すべく街の中を練り歩いていると、突然ポスンッ!と腰元に小さな物体がぶつかって来たのだ
良く見るとその小さな物体はアイスをガッシリ抱え今の衝撃で落ちてしまったのだろう3段目のアイスを恨めしそうに目で追いながらおずおずと後退りをした
きっと自分の図体に怯えてどうして良いか分からずチラチラその小さな物体は此方を覗いている
その小さな物体を見やると、ふっと何故かエースと今だ手配書でしか知らぬ弟ルフィの幼少時の光景がスモーカーの頭をよぎる
アイツはきっと…とても優しく強い兄貴だったんだろうな…いつも弟の話になると決まって自信に満ち溢れた何とも心地良い目で笑みを浮かべてた…
お前なら…こうゆう時ゃどうするんだ?
怯える目で此方を覗く子供にスモーカーは、ゆっくり背丈を少し同じ位に下げてしゃがみ込むと目の前に在る小さな頭にポンッと手を置き自分のポケットから小銭を掴んで、その子供の手の平に握らせた
『…悪ぃな、俺のズボンがアイス食っちまった…次ゃ〜五段を買うと良い』
その途端、子供の顔がみるみる万べんの笑顔に変わり自分の顔をまっすぐ見直し「うん!」と大きな声で礼を述べて走り出した
…何故…お前は海賊なんだ…何故俺とお前は…
考えても考えても答えの出ない苛立ちにスモーカーは虚しく空を見上げた
すると、後方からたしぎの声が聞こえるとスモーカーにしては珍しくその苛立ちを偶々近付いて来たたしぎにぶつけてしまったのだった
『ちょっと腰が抜けてて…』
『ヌけてんのは気合いだけじゃ足らねぇのかテメェは!!』
『ご…ごごめんなさい』
我ながら情けないのは分かっていたが、これから巻き起こる嵐を思うとスモーカーの頭の中も沸き立つ不安が拭えないでいたのだ
もぅ事は起きてる…さっきの部下の情報によりゃ既に広場でどこぞの海賊達が騒ぎを起こしてるらしい…
きっと…エースの弟モンキーDルフィも居る筈だ…
大体の嫌な予感は当たる…海軍大佐としてのだ
なのに何故かアイツの事ばかり脳裏をよぎる…アイツの弟の事だからか?それとも…麦わらのルフィを助けにこの街に来るかもしれねぇからか?
…アイツを待ちわびてる
…早く触れたいと…罪でも良い…エースを存分に抱き締めたいと…
その時広場で事は始まった
―続く―
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