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煙炎
いつもの様に@


『なぁ…俺を…捕まえてくれよ…』




窓枠から覗く海の色は、お前の目にはどう映っているんだ…
きっと…俺はお前をずっと…


…捕まえられない









―海軍内一室―

今日もバタバタ慌ただしく下っぱどもの海兵は上官であるスモーカーに書類やゴタゴタを持ち込んでくる

やれ名も上げぬ海賊を見つけただの同僚のヒナから借りて木っ端微塵にしてしまった海軍船の請求書だったりだので、休む暇も無く性に似合わないデスクワークで書類の山を地味に片付けていく

こうゆう自室にこもりっきりな状態になると、やけに最近ひとつの事ばかり脳裏をよぎるのだ

『……ハァ…チクショウ一服しなきゃらちがあかねぇな』

山積みの仕事と思うアノ事を交互に考え盛大に溜め息を着き、スモーカーは馴染みの葉巻では無くスパイスの香りがうっすらする目新しいまだ封も開けていない葉巻の箱を手に取った

くるくると箱の緑がかったリボンをほどき上蓋を開けると、途端により一層強いスパイシーな香りが鼻を突く

中の葉巻を一本くわえ近くに有る蝋マッチに靴底でシュッと火を灯すと、淡く揺らめく炎が顔を見せている

葉巻を火で燻し深く葉巻の煙を吸い込と先程の若いスパイスの香りが鼻先を抜けていった

一息して静かに右手に残るマッチの火を見ると、未だゆらゆらパチパチ己の存在を燃やすべく炎は揺らめいていた

『ヤニは火種がなきゃ使い物にならねぇんだよなぁ…フッ…俺も…か』
…情けねぇ
テメェで手に入れておいてテメェで臆してやがる…
お前を捕まえて離れられない様にこの部屋に縛り付けて置きたいくせにお前の自由を俺が奪い取ってしまって良いのかなんて矛盾だらけな事を何時も…何時も…

『フゥ…』
白猟のスモーカーの名が泣くな…

一息着いて手を止めれば開け放たれた丸窓からは肌に刺すようなツンと冷たい風が吹き込み、嫌が負うにも炎を纏うアノ青年を思い出させる

『フゥ…肌恋しいなんざ年甲斐もねぇ戯れ言か…』

ただ虚しさが風と一緒に通り抜けた


―続く―



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