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「   」
ちょっとダーク/ちらっとドロドロ/ほのぼの/「 」で話が進みます
以上に引っ掛かる方は閲覧をご遠慮下さい。




「久しぶりだなー。こっち戻って来たんなら今度飲もうぜ」
「なら他の奴らも呼ばね?」
「他ー?」
「まだこっち残ってる奴ら」
「本橋の奴ケッコンしたぞー」
「マジで?」
「マジマジー」
「んじゃ本橋は抜きで」
「あと誰残ってたべか」
「お前会わねえの?」
「佐々木と大石くらいなもんだ。そーいや、ミカセンセもケッコンしたって」
「マジで!?」
「マジマジー」
「あのタラシ教師が一人の女に落ち着くなんて嘘だろ?あいつ昔俺にケッコンは地獄だとか言ってたんだぜ?」
「それがまじぴょん。しかも俺ら卒業して二年後だってよ」
「はあ?つーか、式呼ばれてねえの?」
「なんか式は身内だけで挙げたらしい。大石の奴がトッコーするとか言ってたけど沈没したってさ」
「マジで?」
「タラシに限って本命が出来ると甘いっつーけど、その線らしいぞ。奥さんの写真とか言った時点で蹴られたと」
「世も末だな」
「そういうお前だってまだタラシまくりなんじゃねーのー?イイコいたらショーカイしてよ」
「風俗にでも行ってろ」
「なんだよ、お前にまで本命チャンあらわる?」
「あっちの仕事キツかったんだよ、遊ぶヒマもねえし」
「あー。だから大学もこっちのにすりゃよかったんじゃん?結局こっち出戻りしたんじゃ意味ねー」
「うるせーよ」
「ハルミがわんわん泣いて止めてたのナツカシー。なのにお前ときたら六年も付き合った女に地元出るから無理とか!ヒデー」
「うるせーよ」
「んでおま、一月もしないで女作ってたんだって?はるばる追っかけて会いに行ったっつーのによく自殺しなかったよなハルミ」
「誰から聞いた?」
「キミコ。あいつも今こっち出てるからいいけど、お前キミコに会ったらマジ刺されんじゃね?」
「ハルミ、どうしてる?」
「あーそれ?結局聞きたかったのそれ?ウン年ぶりに戻って来たと思ったらやっぱそれ?」
「うるせーよ!」
「俺しんないけど。死んだっつー話も聞かねーし、生きてはいるんじゃね?よかったな」
「よかねえよ」
「つーか今更だろ?テメーがあんなフリ方しといてさー」
「わかってるよ」
「女食い過ぎて故郷の女がなつかしくなったか?ハルミイイオンナだったもんなー」
「そんなんじゃねえから」
「んじゃ何なのよ、いまさらー。それともハルミがまだ一途なの期待しちゃってんの?」
「だからそんなんじゃねえよ」
「でも思っちゃうよなー。当時お前狙ってた女もあの捨て方には引いてたつーのに、ハルミ追っかけて行ったんだろー?ハルミお前の事アイシテルーって感じだったもんな」
「愛されてたのはわかってたんだよ」
「もしかして今頃ゴメンとか謝っちゃいたいカンジ?」
「いや」
「今更俺もアイシテルーとか言いたいカンジ?」
「それ」
「爆笑。ウケル。お前仕事し過ぎてオカシクなったんじゃ?」
「俺も若かったんだよあの頃は」
「ガキだったの間違いだろー」
「かもな」
「あーほんで?何知りたいの?連絡先?つか、お前まだハルミが自分に惚れてるって疑ってねーのな。どっから来るのその自信?顔?テク?」
「別にそう思ってる訳じゃない。ただ家にハガキも来てねえみたいだし、人妻でなけりゃ会いに行くくらいはいいだろ」
「お前らの親同士幼馴染みってのだっけ」
「そう」
「つか親に聞けば知ってんじゃねーの」
「それこそ今更聞けるかよ。どうせお袋はあの時の事知ってるんだろうし」
「あーヨソサマのお嬢さんキズモノにして今更関わるんじゃないわよーって?」
「絶対言う」
「お前んとこのなら言いそうだわなー」
「あいつのケーバン知ってる奴一人くらい残ってるだろ?」
「だからお前さー自信あんのな」
「ねーよ」
「あるだろー。アイシテルとか言えばハルミとやけぼっくいとか期待しまくりだろーそれ」
「あの頃冗談でも言ってやれなかったから、ただ言いたいだけなんだよ」
「今頃言われてもこまんじゃね?」
「それでもいい」
「やっぱ自信あんじゃん」
「イイコ紹介してやるから頼むって」
「やー」
「あ?」
「別にイラネ」
「なんで」
「俺ケッコンしてるからー」
「は?」
「ついでに俺カミさんアイシチャッテルからー」
「マジで?」
「マジマジー」
「そりゃおめでとさん」
「どもども」
「んじゃ何がいいんだよ?酒ならおごるし」
「実を言うと俺パパになんだよねー。だからさっきの今度はシャコウジレイ、OK?」
「時間は取らせねえよ」
「いやほんと、お前今更何なのー?」
「何が?」
「あんだけハルミこっぴどくフっといて、その間にもお前女散々食ってたんだろ?で、こっち戻って来る事になったらアイシテルのはハルミだけだって?俺チャン騙されないじょー」
「嘘じゃねえよ」
「嘘だよ」
「は?」
「ハルミ本気で死のうとした」
「嘘だろ」
「マジマジー」
「嘘だ」
「で、その時お世話になった救急隊員とケッコンして今幸せに暮らしてる」
「ほんとか?」
「嘘だよ」
「なんなんだよ!」
「救急隊員は嘘。相手はしがないサラリーマン。で、今度一児のママになる」
「おい」
「お前の事好きで好きで仕方なくて、捨てられて死にたくなるほど好きでさ。お前あいつの何がダメだったワケ?何かダメで捨てたんだろ?今更拾おうなんて都合良過ぎじゃねーの?それともまた拾って捨てる計画か?今度こそ殺人だぞ?」
「おい」
「今度は俺が追っかけてってお前の事殺してやろうかと思った」
「おいって」
「ハルミの幸せ取るなよ。あいつ最近すげー楽しそうなんだよ。なあ」
「おい」
「俺のカミさんにツラ見せたら、お前マジで殺してやるからな」



「なー、お前最近昼になるとメール打ってんの何?」
「え?あー」
「色々噂になってんぞ」
「噂ぁ?」
「昼休みのたんびメールしてっから、いとしの奥さんにでもと思ってたら、ずっと顰めっ面でさあ。奥さんと喧嘩してっとか、浮気相手と別れ話が拗れてるとか」
「ぶっは!」
「そんでさー、俺んとこに来る訳。お前と奥さんが上手くいってんのかって」
「んだそりゃ」
「わかるだろー?社内パーティーでお前の奥さん相当目ぇ付けられてたじゃん。つーかどうやってお前があの人捕まえたかって、社内の七不思議になってる」
「はっは、僻み上等ー」
「まあ、別にお前顔悪い訳じゃねえし、いい奴だってのはわかってるけどさあ。うん、まあ独身の僻みなんだけどさあ。でもあれよ、気を付けた方がいいって。中には人妻なんてのも萌え要素の一つにしか数えてねえ連中もいるし」
「萌えときたか」
「そんで、それはともかく、なんなの?お前がんな顔してんのも珍しいしさ」
「そんな顔してましたかねえ」
「お前結婚してから更にヘラヘラ度に磨きかかったからな」
「ははは」
「ぶっちゃけマジで喧嘩でもしたんか?あんな人が嫁さんで、正直浮気してるどころじゃねえだろうし。お前もそういうキャラだとは思わねえけど」
「ご心配かけて悪いけど、カミさんとは今もラブラブ絶好調ですよん。俺パパになるしー」
「え、マジで?」
「マジマジー」
「そりゃおめでとさん」
「どもども。……はっは!」
「なんだよ、幸せ過ぎて壊れたか?」
「いや、どっかで似た会話したなあと思って」
「で、なんなんだよ、一週間にも渡るメールの相手は」
「んー?俺が殺人犯になるかもしれない相手?」
「は?」
「だからあ、俺がいつかマジで殺しちゃうかも知れない相手?」
「……おま、ヘラヘラしながらそういうの言うの止めろよ。逆にマジかと思うじゃん、不気味」
「そー?」
「え、何、マジ?」
「冗談」
「はあ」
「今んとこ」
「……」
「だってさあ、俺カミさんチョー好きなんだもんよ」
「……相手男?嫁さん関係?」
「俺の元ダチ」
「は?」
「カミさんの元カレ」
「……」
「俺のカミさんあのクソの事すげー好きだったんだわ、大学離れるから別れるとか六年も付き合ったのにあっさり切られても追っ掛けて行くほど」
「……」
「一ヶ月も経ってねえのに早速新しい女いて、それ見て自殺するほど」
「……お、おい、それ」
「やっとさあ、少しずつ少しずつ無闇に泣かなくなって、また笑うようになって、俺の事好きになってくれて、一緒んなって、これから子供も生まれるっていうのにさあ」
「……」
「あいつときたらこっち戻って来るからまた会いたいとかぬかすんだよ。あの頃言えなかったからアイシテルとか言いたいとか言うんだよ。今更。今更!」
「…………ああ」
「テメーが散々女食ってる間、どれだけハルミが泣いたかも苦しんだかも全然考えようとしてねえんだ。戻って一言言いさいすりゃ自分のとこに帰って来るって、疑ってすらいねえんだよ。一言どころか一目すら出来る立場じゃねえって理解してすらいねえんだよ」
「タケ……」
「殺してえ。マジで殺してえや。あんなもんが生きてる限りハルミはまた泣くかも知れねえ。あいつが死んでも泣くかも知れねえけど、だったら知らせなきゃいいだけじゃん?」
「……」
「あいつなんか死ねばいいんだ」
「……タケ、今日……飲みに行かね?」
「うん?ああ、……や、でもなあ、やっぱダメだ。カミさんとこ早く帰りたい」
「そう、だな。そうした方がいい」
「そうだ、今日家に来いよ。あ、なんだったらお前のカノジョも呼んでさ」
「……ああ、連絡、してみるよ」
「じゃあ帰りにいい酒買ってっかー」



「ていうワケで、サトとマキちゃんが今日家来るから」
「何がていう訳でなの?」
「俺がさあ、ハルミのこと愛しちゃってるってことなんだよ」
「意味がわかりません」
「まーたー。わかっちゃってるくせにー。この照れ屋さん☆」
「☆とか使わないでよ」
「(^3^)」
「あはは」
「笑いますか」
「笑いますよ」
「ははは」
「じゃあご飯何にする?皆でつつけるのがいいよね」
「俺ハンバーグ☆」
「聞いてないし☆」
「だってさあ、俺が犯罪者になったらダメでしょ?」
「何の話?」
「だから、ハルミのこと愛しちゃってるってことなんだよ」
「私も愛してるよ」
「あれ?」
「何?」
「いや、嬉しい」
「なんか照れるんですけど」
「ははは」
「ほほほ」
「ていうワケでサト達が来てくれる事になったんだ」
「わかったー」
「愛」
「ハンバーグも作っとく」
「してる。あーもう途中で送っちゃったじゃん」
「あはは」
「じゃあ残りの仕事も頑張ってくるぜ!」
「がんばってね、パパ」
「早く帰るよ、ママ」



「なんだお前、ここんとこ昼休みにやたら顰めっ面でメールやってると思ったら。今度はヘラヘラしながらやってるし。つかお前、メール打つの早っ。女子高生かって」
「ははははは」
「お前が最近メール打ってる相手が誰か賭けまでされてんだけど」
「聞けば答えますけど」
「や、なんかお前がそう深刻な顔してっから、聞いちゃいけない空気みたいな?」
「今のはうちのカミさんにです」
「デレデレしやがって」
「ははははは」
「で、今奥さんに鼻の下伸ばしてメール打ってたって事は、浮気相手じゃなさそうだな」
「どっから出るんすかね、そのネタ。俺学生ん時からこーんな一途なのに」
「え。お前、奥さんと学生ん時から?」
「や、正確には就職した辺りっすかね」
「はあ?じゃ、お前、まさかずっと片思いとか?」
「片思いとかですね」
「うーわーあ」
「ははは」
「いや、でもあれか、ああいう人に本気で惚れちまうとそうなってもおかしかねえかもな」
「そうですかね。あー、でももうダメっすよ。俺以外はもうダメ」
「いやいやいや、まあまあ。真っ向不倫勝負しようなんてバイタリティーのある男なんてそういねえんじゃね?あー、いや、お前の奥さんなら……や、お前も苦労してんだな」
「苦労のしっ放しですよ」
「はあ」
「まあ家に帰ればそれもふっ飛びますけどね」
「よし、ノロケる余力があるなら今日は残」
「あーそういえばうちって育児休暇ありましたよねえ?」
「オイ、それは脅しか」
「いえいえ。俺なんぞに回って来る仕事があって光栄で御座いますよ」
「よく言うぜ、こっちはいつお前に椅子盗られるかってヒヤヒヤもんだ」
「まあ俺、そういうのは年季が入ってますから」
「……ああいう奥さんで良いような悪いようなって感じだな俺は。ホントお前のバイタリティーには感心するよ」
「そういうんじゃなけりゃそもそも略奪なんか出来ませんて」
「え、略奪婚?お前が?」
「正確には違いますけどね、向こう別れてたし」
「げー。よくやるわ」
「ははははは」
「ほんじゃ残りもガツガツやってちょーだいよ。俺はのんびりやるわ」
「はい。お疲れ様です」



「今から帰るよーハンバーグー」
「私がハンバーグみたいじゃないそれ」
「今から帰るよー俺の奥さんー」
「一緒に来るの?」
「うんにゃ。サトは一旦家に戻って来るってさ。7時頃っつったかな?」
「わかった。ところでなんでメールなの?」
「うん?」
「いつも電話じゃない」
「あー。ホラ、ねえ?」
「ねえ?とか言われても」
「今電車乗るー。なんかメールしたくなる時あるじゃん?」
「女子高生か」
「ははは。なんか今日上司に同じような事言われたなそれ」
「何かあった?」
「なんも。なーんもないよ」
「嘘だー」
「ハルミ、幸せ?」
「勿論幸せ。タケは?」
「当然幸せ」
「ていうか電車の中で携帯いじらないように!」
「はーい。あ、ホラ今改札口だから」



「もしもし?」
「電話して来るなら最初から電話にしてよ」
「そう言うなよー。文字の遣り取りも奥ゆかしくていいじゃん」
「奥ゆかしい遣り取りだったっけ?」
「ヘラヘラしながらメール打ってるって言われた」
「人の前でメール打つの止めてよっ」
「奥ゆかしいなあハルミは」
「何言ってんの」
「俺ホント幸せだなーって言ったんだよ」
「絶対何かあったでしょ」
「だからなーんもないって。俺達の幸せの前にはなーんもないって事」
「……タケシ」
「ハルミ、俺お前の事中学から好きだった」
「え……」
「お前の事追っ掛けて同じ高校行った、同じ大学にも行った。お陰で俺結構頭良くなったっしょ、おバカだったのに」
「ホント?」
「うん。俺実はすげーしつこいよ、ストーカーとは流石に言わないけどさ、お前の事忘れようとしなかったとも言わないけどさ、……俺どうしてもお前に幸せになって貰いたくて。うん、まさか俺がそうしてやる立場に立てるとは思わなかったんだけど」
「私、本当に幸せだよ?」
「うん。お陰で俺も今すげー幸せだよ。何でも出来るくらい、幸せってこういう事だなって思う」
「……タケシ、あのね、私も今になって思うの。全部良かったって思うの。私……あの時凄く自分勝手な事した。家族にも友達にも……私の事を思ってくれる人皆に酷い事したって思う」
「ハルミ」
「でもね、私バカだから、そうでもしなきゃ気付かなかった。色んな事わかんなかった。あんな事しなくても、する必要がなかったとしても、今みたいに感じる事は出来なかったと思うから。わかった分、私が貰った幸せの分、ちゃんと皆に返したいって思う。もっと、ずっとずっと、タケシを幸せにしたいって思うよ」
「――ハルミ」
「何でも、なんていいの。何でもなんて言わないで。私と、私達の子供を、ずっと幸せにしてやるって言って。そうして。タケシにしか出来ないんだよ、誰に他の何が出来たって、それはタケシにしか出来ないの」
「ハルミ……前言撤回していい?」
「何の?」
「お前の事いい女だなって言ったんだけど、俺の想像以上だった。お前はすげー女だ」
「……誰に言ったのそんな事……」
「えーと……上司?」
「そんな事人に言わないでよろしい!」
「えー」
「えーじゃない!恥かしいじゃないのっ」
「でもホントの事だしー」
「でもはなし!」
「はーい」
「でもたまにはメールも悪くないかもね」
「……消してやるのも嫌でさ、……お前ので塗り潰してやったんだ」
「何?」
「俺がお前を愛してて、お前は俺を愛してるって事」
「…………うん」
「あ、もう家見えて来た。切るよ」



「おかえり」
「ただいま」
「今の、メール送ったらすぐ返って来たからビックリしちゃった」
「俺も。つか、同時に送った?」
「そだね。しかもおんなじメール」
「気が合うねえ」
「そうだねえ」
「あー腹減った。ハンバーグー」
「久しぶりにメール打ってたら指痛くなっちゃったわ」
「はは。俺も」



「これからも、末永くよろしく」
「これからも、末永くよろしく」




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