10 NOvEL 05 拍手文 深く、嵌る。 吸って、吐いて。 普段なら容易なその行為が、今はままならない。 深い深い口付け、深い深い交わり。 緋色のその目、欲を含んだ目。 全てが俺を惑わす。 『銀…ぎ、ん…っぎん…』 何度も何度もその名を呼ぶと、優しく抱き締め、俺の髪をとぐ。 暖かい。心地よい。 『土方…好きだ。愛してる。』 逢瀬の度に囁かれるその言葉は、もはや呪縛じみている。 俺はいつからこんなに嵌ってしまったのだろう? 他人に対してこんなに依存することはなかったはずだ。 『土方…俺から、離れんなよ?』 『ああ…』 嗚呼、そうか。 俺だけじゃねえ。 こいつも俺に依存してるから、抜け出せなんだ。 互いが互いを深く、嵌めあった。 なんて滑稽だろう。 [*前へ][次へ#] [戻る] |