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10 NOvEL 05
愛してるって。




涼しい。
いや、もう寒くもある。


『10月、10日か・・・』



今日は


今日は・・・・










「銀時・・・おいで」

「松陽先生?」

「今日は、お前の生まれた日だね」

「ッ・・・」

「何故そんな顔をするのですか」

「俺は、祝われちゃ、いけないんだ」

「そんなこと、誰も云っていない」

「だって!あんなに、人を、殺・・・」

「お前が生きているだけで、嬉しい人もいるんですよ」

「・・・」

「だから、――――」









笑いなさい。















『誕生日、ねえ・・・』




俺の、生まれた日。























――――――――――――――


昨日開けっ放しだった窓からの肌寒い空気で目が覚めた。
昨日も同じように目覚めたな
なんて考えながら、朝起きてからの一通りのことをこなす。

不意に目に入ったカレンダーが、今日は神無月の10日なんだと俺に知らせた。




『あいつ、たしか今日誕生日だったな』



銀色の髪が脳裏に焼きついている
いつも甘い匂いを漂わせて、俺を翻弄する。

飄々としている、つかみどころのない奴
いつも俺に「愛してる」とか抜かしやがる奴


『ッ・・・・・』


思えば俺は貰っているばかりで―――


『・・・何か、してやるか』



















だからと云って、何か思いつくわけでもなく。



あいつが欲しがるものといったら

甘いものと金。



『・・・甘いもの』


金なんかやるよりは、よっぽどいいだろう。

あいつが普段は食えないようなとびきりいいものを買ってやろう。


でも
それだけ。



形に残らない。



『っつっても、他に何か思いつくわけじゃねえし・・・』



悩んで買ってやるだけでも、あいつは喜ぶだろう。
そういう奴だ。



























――――――――――――――


誕生日だからって、何か変わるわけでもなく
相変わらずの日で。

今日に限って神楽も定春も新八もいない。



『ははッ・・一人』


いつもそうだったじゃねえか。



一度きり、唯一度きり

あの人に祝われただけ。




『だからなんだっつーの・・・』






「笑いなさい」




『一人じゃ無理だ』










『一人じゃねえよ』

『ッ!土方!何で・・・』

『お前、今日誕生日だろ』


そう云って差し出された箱は、こいつには到底似合わない可愛らしいラッピングが施されたもの。

それが何なのかは直ぐわかった。



『高かったでしょ』

『たまにゃいいもん食え』



無愛想な面で、煙草をふかしながら云う。


嗚呼・・・




『・・・銀』

『・・・え?』


突然呼ばれ、返事が遅れた。

返事をしたときには、既に俺の耳元まで来ていて
抱きしめられて


















『愛してる』



































――――――――――――――


云ってやった


いつも俺を恥かしくするその言葉を。



抱きしめて、囁いて。




そしたら、あいつも抱きしめてきて。





その顔を少し見たら




笑っていて。






『土方』

『・・・なんだ』

『俺・・・』













うまれてきてよかった。








































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あきゅろす。
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