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10 NOvEL 05
甘味よりも君。




『トリックオアトリーーーーート!!!』

『ぬおあぁッッ!!』



神楽の盛大な一言と体当たりで、銀時が目の前のテーブルにつんのめる。



『痛ってえな!テメ、こら神楽ァァ!!何しやがんだァー!!』

『銀ちゃん今日はハロウィンネ!だから酢昆布ちょーだい!』

『なんで俺がお前にやらなきゃなんねえんだよ!下のババァにでも強請ってこい!!』

『ババァはくれなかったネ!だから銀ちゃんちょーだいヨ!』



騒々しい声が響き渡るなか、呼び鈴の音がした。




『ちょ、神楽たんま!客だよ客!!』

『そのまま酢昆布買ってくるヨロシ!』

『買うか莫迦!!』



言い合いながら玄関の方へ向かっていくと、その陰は見慣れた黒尽くめの陰。


『え、何、土方?』


呟きながら扉を開けると、案の定その人で。

しかし土方からは予想だにしない一言が発せられた。






『ト・・・トリック、オア・・トリート?』


『・・・・・へ?』














―――――――――――



『副長!旦那から電話ですよー』


『ちッ・・・今行く』


ハロウィンの前日、土方の下へ銀時から電話がかかってきていた。

その内容というのは



『明日お菓子いらないからイタズラさせてくれてもいいよ?』

『は?』

『お菓子は金かかるでしょ?だから身体d・・・』

『死ね莫迦』


その一言で電話を切った。

しかし数秒後


『おいィィ!!そんなすぐ切ることねぇだろぉ!!』

『黙れ、莫迦の相手する時間はねぇんだよ』

『いいじゃん!年に一度のハロウィンじゃん!』

『てめぇの脳内は年中ハロウィン並みに浮かれてんだろうが』

『酷っ!!じゃあいいよ!!もう明日は会わねぇから!』

『勝手にしろ』


そう云って二人同時に受話器を下ろした。

「なんで俺があいつに会わないなんて云われなきゃなんねぇんだ・・・」
そんなことをぶつぶつと呟きながら副長室へと戻る途中



『いいんですかィ?旦那ハロウィン楽しみにしていたんじゃねぇんですかィ?』


沖田が部屋の中からそう問うた。


『いや、お前は働けよ。』

『なんでィ、心配してやってるのに土方コノヤロー。旦那は土方さんの身体が何よりの好ぶts・・・』

『それ以上云うんじゃねェェェェェェェェェェ!!!!!』



そう叫ぶと、顔面を真っ赤にしながらその場を走り去っていった。









『何が好物だッ!!ハロウィンなんか知るか!!!』


憤りながら叫ぶ。

根っからの恥かしがりやな土方には、これ以上にないと云うほどの羞恥の言葉。

だが、銀時が甘味を我慢してまで欲するものとは相当なもの。


『・・・・・・』


なんだかんだ銀時の頼みごとには弱い土方。



『ちッ・・・』




その後直ぐに近藤のもとへ行き、明日の休暇をとった。






―――――――――――








ハロウィン当日。

万事屋の扉の前をうろつく土方の姿。

勿論銀時に会いに来たのだが、如何せん昨日の電話が
口喧嘩で終わってしまっただけ、少し気まずい。


「・・・別に、平気、だよな?」


扉の向こうから聞こえる銀時と神楽の声。


意を決したように呼び鈴を鳴らした。


徐々に近づく足音。
扉の直ぐ傍に来たとき、銀時が土方に気付く。

一瞬固まったが途端扉が開いた

言葉がすぐに出ない。








『ト・・・トリック、オア・・トリート?』



漸くでたその言葉。

一応昨日の侘びの意味も入った言葉。



『・・・・・へ?』

『・・・・』


あまりの羞恥に黙り俯く土方。


『・・・・・会わないっつったよね?』


銀時からのまさかの言葉に俯いていた顔を上げる。


『銀さんに逢いたかったんだ?』

『なッ!!そんなんじゃねえよ!!一応だ一応!!!菓子だけでもやろうと思ってな!ほら!んまい棒だ!とっとけ!!』


怒鳴りながらそれを押し付けると、踵を返し階段へ向かう。

しかし



『嘘だよ。もちろん土方もらうに決まってんでしょ?』


後ろから抱きしめられる。


『莫迦!離せ!てめえなんかに構ってr・・んンっ・・』


顎を持ち上げられ、口付けられる。
大通りからの視線が土方を更に羞恥の淵へと追い込む。


『ッ・・は・・・やめろ!公衆の面前で!』

『はいはい。じゃあ家入るか』

『・・・・・』


掴んだ腕をひっぱり中へと連れ込む。






『うざいアル。ホモップルのイチャつく場所にいたくないネ』

『なんでィ勿体無い。ビデオ撮影してやりゃいいのに』

『なんでお前がいんだヨ』

『だから撮影に来たんでィ』



扉の陰に隠れて終始を見ていた神楽。
土方をつけて来た沖田がこそこそ話しながら冷ややかな目で家の中を見つめていた。











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