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F.A
冷静と情熱のあいだ ― nero ― / 3
目が醒める時、
とおい 
しあわせのにおいがした。




目覚めてほしいような複雑な気持ちでベッドに眠る幼馴染を見つめた。
いま、部屋の中には自分と彼しか居ない。
なぜという言葉しか浮かんでこない。
もう一人がいない。
「いま」をつくった人。


床に横たわるアルフォンスを抱き上げて、部屋の何処に目をやっても、大好きな名前を呼んでも何の返事もなかった。
いなかった。
一番喜ぶ筈だったなのに。
そしてアルのいた部屋の状況は、その人物が無事ではないのではないかという方向にウインリーの思考を攫っていく。
ピナコはその現場を見に家を出ているが、なんと言うだろうか。
そして、自分はアルに何と伝えるべきなんだろう。



***



こんな気分で、人の家を訪れるのは誰だって、好ましくない筈だ。
ピナコは重い足取りでエド達の家に向かった。

ウィンリィがアルフォンスを抱えて、むしろ引きずって帰ってきた。

アルフォンスの無事を確認してウィンリィに後を任せて、歩を進める。
大して離れていない目的の家の前に辿り着くと、意識して息を吐いた。
ノブを回す。


家の中はウィンリィが消したのか、始めから点いていないのか、明かりがなく、ゆったりとした闇が占めていた。
持ってきた灯で、部屋の中を見渡した。

部屋には、エドが書いたのだろうか、さまざまな錬成陣や構成式、文献などが積み上げられたまま隅に寄せられ、床の中央を白い錬成陣が占めている。
その白を丹念に探っていくと、黒い紋様に気づいた。ちょうど自分が立っているドア側から見て、反対方向にある。
光も、あまり届いてはいなかった。
何もない箇所を選んでそちらに歩む。
その『黒』に身を屈ませ明かりを近づける。

正確には『黒』ではなかった。
覚えのある臭いが鼻腔を掠め、目から入る情報を裏付ける。



血、だ。

…誰の?

それにはやはりここにいるべきなのにいない人物が絡んでいると考えるのが最も無理を生まない論理だろう。


身を起こす。息を吐き出す。
明かりを持ち直すと再びドアをくぐった。

元来た道を戻る。

ウィンリィも同じものを感じ取ったのだろう。

「……さて、今度は何できるのかねぇ」


ゆっくりと、夜は明ける。
特有のまどろむような寒さの中、また 息を吐いた。



***



ウィンリィは椅子の上で自分の膝を抱えて身動ぎもせず、夜が明けるのを、光がさしてくるのを瞬きもせず見つめていた。

ふと誰かに呼ばれた気がして自分の傍に居る人物に視線を投げかける。




数年ぶりの瞳を見つけた。


「…ういんりー?」



目を覚ましたアルフォンスはゆっくり瞬きを繰り返すとウィンリィの方に顔を向け静かに微笑んだ。

光を吸った彼の金の髪が、眩しい。
その様は後光が差してるかのように映った。



*****
やっとお目覚めです。
前フリ長いしで少々疲れてきてしまいました凹
本番までしっかり書けるか…な……?
感想頂けると嬉しいですv

2005/12/09

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