長い読み物
転んでドッタンタン
何が何でも捕まってはいけない。
ナナシは今全力でエニエス・ロビーの廊下を走っていた。
『わああああああ怖いいいいいいい!!』
後ろでは鬼の形相のルッチが追いかけてきている。
『ルッチさんも速いなぁ!そうか!剃使ってるのか!!』
「コラ待てナナシ!!」
待てと言われて待つアホがどこにいるんですかブワァァカ!!
「くそっ、何でアイツあんなに速いんだ!剃使っても追いつけねぇ…!」
『絶対に捕まr、』
捕まらないぞと言い切る前にナナシは段差に躓いてしまった。
これでは捕まってしまう。
目に涙が滲んできた。
痛いわけじゃないんだ、悔しいんだ。
『いったいなぁ…ルッチさんさっきより速い速度でこっち来てるんだけど。今がチャンスってことなの?本当に鬼畜!!』
うわあああああ!と現実逃避しているととうとう追いつかれた。
ルッチさんは屈むと私に目線を合わせてきた。
『もう…いいよ、煮るなり焼くなり好きに…』
「…バカヤロウ」
そう言うとルッチさんは私を抱きしめてお姫様抱っこした。
『ちょ、ちょっと難易度高いですって』
「盛大に転びすぎだ。膝から血が出てる」
ルッチさんに指摘されて気付く。
あっ、本当に血出てたわ…
こりゃ痛いはずだ。
さっきの転んだ衝撃で皮がずる剥けていた。
結構グロテスクである。
いつの間にか私はルッチさんに抱えられて彼の部屋に来ていた。
ベッドに座らされた私は彼の行動をじっと見ていた。
というか、それしかやることがなかった。
『ルッチさん。何してるんですか?』
私が問いかけると、さも当然のように
「手当ぐらいはしないと駄目だろ」
と答えた
『(ルッチさんが、私に手当を…!?)』
『…変なもの食べましたか?』
「は?」
私は本心をさらけ出したのに、その返事は酷いっす
ナナシが訝しげに眺めてるとルッチは包帯と消毒液を取り出して手当をしだした。
消毒液が染みて少し悲鳴を上げる。
『小さい傷ほど痛いですね、辛っ』
「…我慢しろ」
手当をするてはとても丁寧で素早く、そんなに痛みはなかったが、なぜかルッチさんと会話がしたいと思ってオーバーリアクションをする。
…?
『(なんで、私、ルッチさんと会話したいなんて)』
今思えばここに来てから私の意識はずっとルッチさんに向いていた。
たまに白い鳩、ハットリの方もチラチラ見てたが、どうしてもルッチさんが気になる。
「ほら、手当が終わった。次は気をつけるんだな。」
ルッチさんが立ち上がってあと片付けをする。
温もりが消えてしまって何だか寂しい気持ちになった。
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最近の私は何だかおかしい
『(何、この気持ち、)』
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