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長編
02. 出発
ある日、僕はフランス兄ちゃんの家を黙って抜け出し神聖ローマと最後にあった場所に来た。

ここにいれば神聖ローマが帰って来るような気がした。
あの時と同じ笑顔で…。


「会いたいよ…」
神聖ローマ…。


「誰に会いたいって?」

振り返るとプロイセンが立っていた。

「プロイ…セン…?」
「なんだよ、驚いた顔して」
「なんでここに?
オーストリアさんのお家のはずじゃ…?」
「あぁ、ここら辺は近々俺様のものになる予定だからな。
下見だ下見」
「また戦うの…?」
「こんな世の中だ、戦って勝たねぇと大きくなれねぇよ」
「そう…なんだ…」

戦う力を無くした僕にはもう関係ない話。


「そんな事よりイタリアちゃんに見せてぇ奴が居るんだ」

僕に見せたい人?

「こいつなんだが…」

そう言ってプロイセンの後ろから現れたのは全身に包帯が巻かれ顔が分からない小さな子だった。

僕と同じくらいの大きさ…。
碧い目が僕を見つめる…。
神聖ローマと同じ色…。

「前の戦争が終わって何か落ちてねぇかと瓦礫の中漁ってたらこいつが倒れてたんだ。
全身大火傷で包帯グルグルだし喉も潰れちまって喋れねぇ、それに記憶が無いときたもんだ。
まだ小せぇし親も居るだろうから記憶が戻るまで俺が面倒見ることにしたんだ」

「こんな小さな子が…」
「皮肉なもんだよな…。
人を守る戦争でこんな小さな奴まで駆り出されるなんて…」
「うん…」


「っと、感傷的になるのは性に合わねぇ。
下見も終わったし俺はそろそろ帰るがイタリアちゃんはどうすんだ?」
「僕はもう少しここに残るよ」

早く1人になりたい…。

「1人で大丈夫か…?」
「大丈夫だよ。
僕等は普通の人じゃないし、自分の身は自分で守れるよ」
「ならいいんだが…。
俺が心配してんのはイタリアちゃんの体だけじゃねぇんだぜ?」
「僕は平気だよ」

お願いだから早く1人にして…。

「イタリアちゃんがそう言うならいいんだが…」


「…ぃ……ねぇか…」

何か呟いたが聞こえなかった。


「じゃあな、イタリアちゃん。
そのうちまた会おうぜ」

そう言ってプロイセンは男の子と共に行ってしまった。



それからまた僕は1人になった。

ボーッと空を眺めているとフランス兄ちゃんが来て「帰ろう」と優しく僕の手を引いた。

空を眺めてた筈なのに気が付かなかった…。
青く澄んでた空に闇が迫っていた…。


フランス兄ちゃんは、黙って家を出た僕に何も言わずいつも通り優しかった。

ただ
「お前も国なんだ。
国民の事も考えてやれ」
そう言われた。

そうだ。
僕は国だ。
落ち込んでなんて居られない。
立ち直らなくちゃ。


どんなに大きくなってもずっとずっと待ってるからね、神聖ローマ…

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