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長編
09. 2つの想い

イタリアと神聖ローマは数百年ぶりの再開で会話に花が咲いた。

内容はイタリアが一方的に話していたが神聖ローマも笑顔で聴いている。


会えなかった数百年を埋めるかのように。




「えっとね、えっとね、次はね…」

イタリアが次はどの話をしようかと考えていると神聖ローマは立ち上がった。

「どうしたの?神聖ローマ。」

「もう…行かないと…。」

悲しそうな顔で神聖ローマが言った。


タイムリミットが来てしまった…。


「そう…なんだ…。」

「そんな顔をするな。
俺はドイツの中からお前を見守ってる。
それに…」

「………。」

「お前が俺を憶えていてくれたら俺は存在し続けることができる。」

「……ょ…。」

「だから…」

「…だ…ょ……。」

「え?」


イタリアから発されたあまりにも小さな声に神聖ローマは聞き返した。


「嫌だよ…。」

「イタリア…。」

「嫌だよ。
神聖ローマ…。
ずっと一緒に居て…。」


顔をあげたイタリアは苦しそうな…泣きそうな顔をしていた。


イタリアの願いは神聖ローマも叶えてやりたい。
いや、叶えたい。


「し、しかし…」

無理だ。


このままでは“ドイツ”という存在が無くなってしまう。


神聖ローマは何も言えず俯いた。


「やっと会えたのに…。
また会えなくなるの僕、嫌だよ…。」

「イタリア…。」

「僕、まだお菓子作ってない…。」


そうだ…。


「僕まだ約束守ってないよ!
だから行かないで!」

「すまない…。」

「嫌だよ!
僕まだ神聖ローマと居たい!」

「無理…なんだ…。」

「神聖ローマ!」



「イタリア!!」



ビクッとイタリアの体が強張る。

「我が儘を言わないでくれ…。」

声が震えている。

「俺だって…お前と居たい…。」

「神聖ローマ…。」

「“さよなら”の…時が来たんだ…。」

「……。」

「……。」

「もう…会えないの…?」

「あぁ…。」

「……。」

「……。」

「ドイツの中から見ててくれるんだよね?」

「あぁ…。」

「そう…。」




「ありがとう。」




その言葉で顔を上げる。
イタリアを見ると曇りのない双眸がこちらを見つめていた。

「俺、大丈夫。」


−あぁ…もう大丈夫だ…−



そう思った瞬間、嬉しいような悲しいような複雑な気持ちになる。
自分勝手なのは分かっている。


「だから泣かないで。」


……泣く…?


自らの手を頬にやると冷たいものに触れた。

「俺…いつの間に…。」

「気付かなかった?」

イタリアが微笑みながら返す。

「あぁ…。」

つられて神聖ローマも頬が緩む。



少しの静寂が流れる



「“またね”…。」

口を開いたイタリアの声は優しく暖かで、しかし強い意志が感じられた。

「あぁ、“さようなら”…」





ドイツの体から何かが消える気配がした。







小さく呟く
「いってらっしゃい…」



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