長編
08. 再開
「とても充実した時間だった。
成長したマリアの顔も見れたしな。」
神聖ローマが微笑む。
「マリアなんて呼び方はもう古い!
今は天下のプロイセン様だぜ!!」
「俺はマリアの方が馴染みがあるんだがな。」
「まぁ、俺が生まれた時から一緒だとそうだろうな。」
ハハハと2人の顔に笑みが浮かぶ。
「そういや、イタリアちゃんには会わなくていいのか?」
プロイセンはふとした疑問を投げかけた。
その瞬間神聖ローマの顔に影が差した。
やべ、まずったか?
プロイセンは自分が放った言葉に後悔した。
「会ったら戻れなくなってしまう。」
絞り出されるように神聖ローマが答えた。
その言葉が今までを物語っていた。
「そうか…。」
「別にマリアが気を落とすことじゃない。
お前が覚えてくれていた事が分かっただけで俺は嬉しい。」
「お前の存在は忘れたくても忘れられねぇよ。
それは信じろ。」
「あぁ、ありがとう。」
しばらくの沈黙…。
「ではそろそろ戻らないとドイツの体が耐えられない。」
神聖ローマが口火を切った。
「久々に話せて楽しかったぜ。」
「俺もだ。」
そして神聖ローマが目を閉じようとした瞬間。
「ドイツー!!」
イタリアが叫び声と共にドイツに抱きつく。
突然の事に神聖ローマとプロイセンは言葉を失った。
「起きたらドイツが居なくて俺…。
ん…?」
イタリアがドイツから離れる。
「神聖…ロー…マ……?」
流石イタリアちゃん。
と思うと同時にプロイセンの中に不安が広がった。
「イタリ…ア…。」
「ねぇ、神聖ローマだよね?
神聖ローマなんだよね?!」
「ち、違う…。」
神聖ローマは後ずさる。
「俺、ずっと待ってたんだよ!」
「お、俺は神聖ローマなんかじゃ…ない…。」
「帰ってきたんだね!」
「違うと言っている!!!」
ビクッとイタリアの体が強張る。
「俺は神聖ローマなんかじゃない!!」
ばちん!
その瞬間神聖ローマの頬に強い衝撃が走った。
「なっ…。」
何が起こった?
神聖ローマの思考が追いつかない。
イタリアの顔を見ると今にも溢れそうな程の涙を浮かべている。
「イ…イタリア…。」
「イタリアちゃん…。」
「何百年も待ってたのに!!
折角会えたのに嘘つかないでよ!」
イタリアの目から涙が零れた。
「………。」
「僕…凄く嬉しいんだ…。
やっと神聖ローマに会えた…。」
イタリアの手がそっと神聖ローマの頬に触れる。
「イタリア…。」
一瞬頬を緩めた神聖ローマだったが、また口を固く結び直し、
「俺はお前に会わせる顔が…無い…。」
「何で?」
「約束したのに…。
お前との約束を…果たせなかった…。」
神聖ローマの肩が震える。
「そんなことないよ。」
神聖ローマの手をイタリアが包んだ。
「会いに来てくれた…。」
「すまない…イタリア…。」
「謝らないで…。」
暫くの間沈黙が流れた。
「忘れないで…いてくれたのか…。」
先に切り出したのは神聖ローマだった。
「神聖ローマのこと忘れるわけないよ。」
「イ、イタリア…。」
「だからさ、もう泣かないで。」
泣く?
神聖ローマは自分の頬に触れると冷たいモノに触れた。
「俺…泣いていたのか…?」
「気付いてなかったの?」
「あぁ…。」
イタリアが微笑み、つられて神聖ローマにも笑みが溢れた。
少し離れた所で2人の会話を見ていたプロイセンは安堵の溜め息を吐いた。
と同時に不安になった。
ヴェストは?
このまま神聖ローマが留まってしまう事は無いのか?
そう思うと2人の再開を素直に喜べない自分がいた。
ヴェスト…
プロイセンの不安がどんどん広がっていく。
その瞬間神聖ローマと目があった。
力強い目。
そうだ。
神聖ローマも分かっている。
大丈夫だ。
今は再開を素直に喜ぶべきだな。
プロイセンは自分にそう言い聞かせ、自室へと戻った。
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