長編
07. 目的
「俺を…殺す…?」
「あぁ、そうだ。」
見ると不気味な笑みを浮かべている。
「何で…。」
「お前は既に亡国だ。
なのに何故生きている?」
「そ、それは……。」
「何故お前が生きて俺が死ななければならなかった?
一体何が違うんだ?」
首に置かれた手に力が入る。
「それは…俺の存在を望む奴が…居た…から…。」
「俺には望む人物が居なかったと?」
神聖ローマの声が低くなる。
「そ、そういう意味じゃねぇ…。」
「俺は一体何故最期まで戦った?
何の為に?」
「それは守るために…。」
「…誰も俺の事を望んでいないのに…か?」
「そう言う事じゃねぇよ…。」
「ならばどう言う事だ!!」
怒号と共に息が出来ない程の力が首にかかった。
「何故俺が消えなければならなかった!!
何故!!
生きたいと願った俺が!!」
「き、聞け…よ……。」
息が出来ず掠れた声しか出ない。
「何故お前なんだ…。」
神聖ローマの瞳から一筋の涙が頬を伝った。
その涙と共に首にかかっていた手が離れる。
「俺には約束が…。
イタリアとの約束があったのに…。」
「イタリアちゃんと…?」
「あの戦いが終わったら必ず会うと言ったのに…。」
「そんな約束が…。」
「なのに俺は消え、約束を果たす事が出来なかった…。」
「………。」
かける言葉が思いつかない。
「だから俺は生きたいと願った。」
「………。」
「なのに…俺は…。」
「消えちまった…か。」
プロイセンが奪うように続けた。
「そうだ。」
神聖ローマは俯きつつ腰を浮かしプロイセンから体を剥がした。
「すまない。
熱くなり過ぎた。」
「いや、構わねぇ…。」
プロイセンはそう言うと立ち上がった。
「それにしてもお前らしくなかったな。」
「あぁ。」
「数百年振りか…長いな…。」
「そうだな…。」
沈黙の中、神聖ローマが口を開いた。
「本当はお前よりもこのドイツを殺したかったんだ。」
「なっ…!」
プロイセンの顔が一気に強張る。
「そんな怖い顔をするな。
殺す気はもう無い。」
「よかった…。
けど何でだよ?」
「俺自身分からないが、きっと羨ましかったんだ…。」
「はっ、嫉妬か?」
プロイセンが嘲笑うように聞いた。
「かもしれないな…。
イタリアの中で俺が消えた代わりにこいつが…ドイツがイタリアの中を支配していったんだ…。」
「今でも好きなんだな。」
「好きに決まっているだろう。
俺が初めて愛した人だ。
だからこそかもしれない。」
「だからこそ?」
「だからこそ…他の奴等が俺を忘れてもイタリアだけには忘れて欲しくなかった…。」
「なるほど。」
「だがマリア、お前に話せてだいぶ楽になった。
ありがとう。」
「お役に立てたなら光栄だぜ。
領国様。」
「ドイツの中から消える事は出来ないがこのまま眠りにつく、出て来る事はもう無いだろう。」
「別に俺と一緒の時くらい出てきても良いんじゃねぇか?」
「それは無理だ。
ドイツの体への負担が大き過ぎる。」
「そうなのか…。
寂しいな…。」
「あぁ、短い時間だが迷惑をかけたな。
それと首を締めてすまなかった。
痕が残らなければ良いんだが…。」
「これくらい対した事ねぇよ。」
プロイセンはニッと笑顔を向けた。
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