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エシホ学園の日常
エシホ芸術祭
サァ・・・・・・


少し暖かい風が木々を揺らす。太陽に照らされ、深く濃い色をした緑の葉をゆらゆらとゆらゆらと・・・。

桜の桃色の花びらはすっかり散ってしまい、今は緑の葉が木を覆う。
空には所々白い雲があるが、日光は何にも邪魔されずに地上を照らし明るくする。そのおかげか、木の緑が強調されだんだんと春から夏に季節が変わるのを教えてくれる。

そんな晴天下の中、ある一室で行事が説明されていた。
そこは秘密主義で有名な高校『エシホ学園』の敷地内にある学舎の中。場所は三階にある生徒会室。そこで生徒会長であるフェネ・ハプスブルクが5月に行われる行事を説明していた。


「今年の5月第三月曜日から水曜日の三日間を『エシホ芸術祭』を開催します。」
フェネは自身の澄んだ薄緑の瞳の中に集まった学級委員の面々を映しながら、微笑んだ表情で説明する。直立の不動で立ち、全体を見回しながら・・・。
そんなフェネと丸い机を挟んで反対側にいる学級委員の中にはキャリンお嬢様一行の姿がある。そして、もちろん・・・キャリンはフェネを羨望の目でじっと見つめていた・・・。
「内容の方は名称通り゛エシホ学園内で自分の芸術を披露″する事です。披露する芸術は自由。絵でも良いですし、彫刻でも良いですし、ダンスや武術の演舞でも結構です。要は自分の得意分野の事で芸術を披露してもいいですし、新たな事に挑戦してもいいです。披露する芸術が決まりましたら、28日までに提出をお願いします。では、用紙をお配りします。」
フェネがそう言うと、彼女の執事とメイドがB4サイズの紙を学級委員に一枚ずつ配っていく。そして、それが終わったら二人の使用人は主の後ろに下がる。
学級委員の全員に用紙が行き届いた事を確認したフェネは説明の続きに再び口を開く。
「では、その用紙をこちらにある印刷機で人数分コピーしてください。そして、他の生徒への説明は各学級委員にお願いします。それでは以上となりますので解散です。」
フェネはそう言い終えると、薄桃色のドレスの両端を持ち、体全体で一礼してから執事が『生徒会長室』の中に誘導する。続いて、メイド。最後に執事が入って、扉を閉める。
それを見届けた学級委員達はフェネ達の姿が見えなくなった途端に同じクラスの人と役割に関して、相談し出す。
それは『1−F』の人達も例外ではなかった。

『1−F』の学級委員であるキャリンお嬢様一行、レムお嬢様一行そして美夏達は向き合い、相談し出す。
「さて、どうするかですわ。」
キャリンが意見を求めるように他の人の顔を見る・・・その時、美夏がチラリと無表情のレムの方を見て、今の所は提案がないことを確認したら口を開く。
「まず、やることは用紙のコピーと説明。後は、期限が迫った時にまだ出していない人への催促と集める人ね。」
すると、美夏の意見を聞いたレムは少し頬を吊り上げながら指摘する。
「集める人は学級委員である私達に出すよう言えばいいんじゃないかしら?最初に集める人を個人に特定してしまうと出す人も大変だし。だから、集めた用紙をまとめる人が必要ね。」
それを聞いたキャリンはだいたいまとまったと理解すると、自分のやりたい役割を主張する。
「用紙のコピーとまとめるのはわたくしがしますわ。」
キャリンがそう言った後、美夏もつられて自分のやりたい役割を言う。
「それじゃあ、私は説明をやるわ。」
「では、私は催促の方をやるわね。」
「それでは、決まったようですから、これで解散としましょうですわ。シンヤ、コピーをお願いしますわ。わたくしとメイサは昼から始まる学科の方に行きますわ。」
「ウィ、モン スェイグナァ。」
駸邪が主の言葉に理解を示すと、キャリンとメイサは生徒会室を出ようと廊下に通じる扉の方に行く。それに続けて、レムお嬢様一行も向かう。美夏は駸邪の方を悲し気にチラッと見た後、燎閃と共に廊下に出る。生徒会室に残るのは用紙を印刷機でコピーしようとする学級委員のみ。
そして、駸邪は・・・ただ自分の役割を果たすために印刷機を使用しようとする人達の後ろに並び、行動するのみであった。



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あきゅろす。
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