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エシホ学園の日常
自称と日傘
声がした方向を見ると一行に近付いていた女性の後ろにキャリンとメイサがいた。二人とも抱きつかれている駸邪を見て、あまり良いとは言えない表情・・・・・・キャリンは眉間に皺を寄せ目を細めながら見ていて、メイサは笑顔であるがいつもと比べるとどこか怒っている風にも見える。
そんな二人を駸邪は見て無表情であるが、内心はかなり焦っていた。なぜなら、あの貴族としての体面をかなり気にするキャリン。その執事である彼がこんな卑猥な事(無理矢理であるが)をしていては、彼女が激怒する可能性は・・・大。もしかしたら、メイサの手によって鞭でお仕置きされるかもしれない。現に彼女も怒っている。

駸邪は鞭でお仕置きされる自分を想像し、それに嫌悪感を感じながら、この状況をどう打破しようか考えているとキャリンがムスッとしながら、口を開く。









「遊んでいないで寮に戻りますわよ。」








そう言われた駸邪は一瞬・・・その言葉に目をパチクリさせるが・・・すぐになぜそう言ったのか理解する。それは゛場の状況が読めない″事・・・・・・。
もし駸邪から抱きついていればキャリンは間違いなく雷が落ちていたであろう。だが、今は・・・女性から抱きついている上に駸邪は嫌そうな顔をしている。その状況からして相手から絡まれている可能性が大きい。しかもそれで怒れば事情を知っている者からは短気な人と思われる。キャリンは無意識にそう判断して、駸邪にそう声をかけたのである。これは貴族としての体面を人一倍に気にする彼女だからこその言葉であった。

それに気付いた駸邪はすぐに゛ウィ、モン スェイグナァ″と返事をして動こうとするが・・・彼を離そうとしない相手。女性はキャリン達二人を自身の淡い青色の瞳で睨みつけて、駸邪をがっしりと抱きつく。まるで、気に入った物を離そうとしない猫のように・・・。
駸邪はこのままでは次こそはキャリンに雷が落ちる事を恐れ、相手に呆れながらその女性の顔を見て声をかける。
「・・・マリー。・・・悪いけど・・・離してくれないかな・・・?主を待たせているから・・・。」
すると、女性は怪訝な表情をしながら口を開く。
「主?」
「・・・うん。・・・俺は・・・キャリンお嬢様の執事を・・・しているんだよ・・・。・・・だから・・・仕事の邪魔を・・・しないでくれるかな・・・?」
駸邪は無表情でそう言うと、女性は目と顔をうっとりとさせながら理解する。
「わかったわ、シンヤ。ダーリンの仕事を邪魔するのはいけないものね♪」
女性はそう言うと、両腕を駸邪から離し両手を開くと、そこで初めて彼は体を動かす事ができ、すぐに少し不機嫌そうに眉をひそめているキャリンの所に行く。
「・・・お待たせしました・・・キャリンお嬢様・・・。」
「遅いですわよ!」
「・・・申し訳ありません。」
駸邪は頭を下げると、キャリンはそれを見た後に゛さっさと行きますわよ″と言わんばかりに歩き出し、彼女の従者二人はそれについて・・・いこうとした瞬間
「えぇ!もう行っちゃうの、シンヤ!?」
先ほど駸邪に抱きついていた女性がそう彼に向かって叫ぶ。
すると、その声に反応したのかキャリンは立ち止まり、目を細め苛立ちながら自分の執事に質問する。
「シンヤ、知り合いなんですの?」
「・・・はい。・・・名前はマリー・ヤーグ。・・・三年前に知り合いました。」
「そして、私はシンヤが愛するハニーでもあるのよ♪」
「・・・それは違います。」
マリーの言葉に駸邪は無表情のまま間髪入れずに否定する。
対して相手は゛もう恥ずかしがっちゃって♪″と言いながら、うっとりと彼を見るが・・・。
すると、先ほどマリーと一緒にいた女性が深い色をした焦げ茶の瞳でキャリン達を見ながら、少し微笑んだ表情で口を開く。
「そう言うあなたのお名前は?貴族みたいだから、名の通った家名なのかしら?」
それを受けたキャリンは、ふふんと機嫌を直し首元にスカーフを巻き膝まであるクリーム色のワンピースを着た相手を見ながら、偉そうにあまりない胸を張りながら言う。
「わたくしの名前はキャリン・ゴイルでしてよ?」
「ゴイル・・・・・・もしかして、『影騎士』と呼ばれているグラン・ゴイルの所かしら?」
「そうでしてよ。よくお父様の事を知っていますわね。」
「まぁ、その道じゃあ結構有名だから・・・あ、そうそう。」
女性は日傘をクルリと一回転させた後、キャリン達に向き直り自己紹介する。
「紹介が遅れたわね。私の名前は天宮桜華(あまみや おうか)。エシホ学園にはフラワーデザイナーの特待生として入学してきたわ。」
「フラワーデザイナー?芸術家なんですの?」
「まぁ、フラワーデザイナーは芸術に位置するのは間違いないわね。」
「へぇ、一度作品を見てみたいですわね。」
「時間があるならいつでも歓迎するわよ。そういえば、キャリンお嬢様は普通にエシホ学園に入学したのかしら?」
「わたくしはわたくしの執事であるシンヤの特技によって、特待生で入学しましたわ。狙撃の才能があるんですの。」
「それで駸邪は俺と同じ『戦闘』の教科を受けているよ。」
キャリンが言った経緯をシヴァが楽しそうにそう付け足すと、マリーが目の色を変えて歓喜に満ちた表情で口を開く。
「シンヤ、『戦闘』の授業を受けているのね!それじゃあ」



「私も『戦闘』の教科を受けなきゃ!」



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