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エシホ学園の日常
動揺
『1−F』の学級委員メンバーは他の生徒より早く教室を出る。
そして、足早に『歴史』の授業を行う場所に向かっていく。その様子はお嬢様二人と次期料理長以外の人達は無表情であるが、キャリンとレムそして美夏の三人は一緒に先頭を歩いており、その表情は明らかに怒気を表していた。そして、その後ろ姿からも怒っているとわかるぐらいのオーラを醸し出している。
このまま行けば、この状態の三人を作った張本人である人に一気にぶつけるのだろう。
そこから、どんな罵声が飛ぶかわからない。
その三人以外の人達は心の中でそんな様子を見てみたいという好奇心と同時に恐怖を抱きながらついていく。

一行は階段を上り、二階に着くとそのまま玄関側の反対の方向に歩いていく。
そして、そのまま進むと『歴史』の授業を行うであろう場所と通じる両扉がある突き当たりに着く。
それを、二人の執事は素早く三人の前に行き、取手を握り開ける。
開けられた事を確認した三人はそのまま進み、駸邪と龍虹以外の人も中に入る。一番後ろにいた燎閃が入室した事を確認した二人は同時に扉を閉める。
それが終わった駸邪と龍虹は中を見渡す。

これから三年間、歴史の授業をやる場所として使用するであろう室内は奥にある教卓を楕円で囲むような作りとなっている。
奥の壁には大きな黒板が設置されており、扉からそこまでの間は階段のような造りの道になっていた。
段数は五段。その階段の横には楕円に合わせるように作られた長い机が左右それぞれ三つ設置されており、椅子も同様の状態になっている。

そんな造りの室内に先客が一人いた。
その人は教卓の後ろに置いてある椅子に座っており、キャリン達を見るなり立ち上がってのんびりとした声を彼女達にかける。
「あら、来るの早いわね。出席確認は上手くできた?」

「「「あなたは何を考えて「いらっしゃるんですの!!?」「いるの!!?」「いるんですか!!?」

回答の第一声に怒りを覚えたのか案の定、三人は一斉に彼女に向かって怒りをぶつける。
その怒声は凄まじく、部屋の中で反響するほどであった。どれくらい、怒りを溜めていたのか、この声でよくわかる。
対して、回答は最初と変わらないニコニコ顔でそんな怒声は意を介さないとでも言うような、口調で話し出す。
「あら?失敗しちゃったのかしら?」
「失敗などしておりませんですわ!!むしろ、ちゃんとできましたわよ!!」
「あら、良かった♪やっぱり、私が見込んだ通りだわ♪ありがとうね♪」
「ふん!!あんなの、簡単にできるわ!!」
「うんうん。さすがはゴイルさんとヘマトさんと恒さんね♪あぁ、そうだ。それと、授業がある平日では一年は朝から歴史になるから、これからも出席確認をお願いね♪」

「任せなさいですわ!!」
「そんなの、余裕よ!!」

「あ、あれ?キャリン?レム?」
二人の様子が明らかに変わった事に戸惑う美夏。
彼女としては、このまま怒りをぶつけたい所だったのにそれができなくなってしまう。
駸邪はその様子を見て、ふと心の中で思う。上手く褒め殺しされ、言い丸めこまれた・・・と。
「それじゃあ、まだ時間まで後十分あるから席に座りなさい。ちなみに、座る場所は自由よ。」

「それでは、シンヤ。席に案内なさいですわ。」
「それじゃあ、龍虹。席に案内しなさい。」

「ウィ、モン スェイグナァ。」
「イ、イエス、マイ ロード。」

駸邪は無表情で淡々と言い、龍虹は表情に驚きを隠せず、言葉にも動揺を出してしまう。
そして、それぞれのお嬢様一行は執事により席に案内される。
一方、美夏はというと未だに動揺していたが、燎閃が声をかけた事により落ち着きを取り戻し、彼女主導で座る場所を探すのであった。



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