[携帯モード] [URL送信]

エシホ学園の日常
メモ用紙
「それでは参りますわよ。」
「「ウィ、モン スェイグナァ。」」
自室から出てきたキャリンがそう言うと、主が準備ができたことを確認した二人はそれぞれ、自分の役割を果たす。
メイドは明るい茶色をした革製で片腕で抱えるぐらいの大きさのオーバーナイトケースを持ち、執事は廊下に続く扉を開ける。
ゴイル家の部屋からキャリン、メイサと出て最後に駸邪が退室する。そして、ドアを閉めた後にその扉の鍵穴に鍵を差し込み、施錠。
ガチャリと鳴ったら、駸邪はちゃんと閉まったか確認。それが終えたら、鍵を燕服の内側ポケットに入れ、お嬢様一行はこの学園に入学してからの初めての授業を受ける為に学舎へと向かう。
その初日の姿は、昨日と違う所と言えば、メイサが三人の教科書類が入った鞄を持っている以外は変わりはないが、内面的にはキャリンの機嫌が良かった。
なぜなら、本日の゛目覚めのコーヒー″には昨日と違い、ちゃんと二枚のクッキー付きだった。そのため、キャリンはそれに満足したからだ。

学舎に着いた一行はまず、朝食を取ろうと食堂へと向かう。
向かっている途中で昨日より多少だが、人通りが多い事に気付いた駸邪は、少し混んでいる可能性があるな・・・と感じる。
そして案の定、食堂に着いて目にした光景は満席というほど椅子に座ってはいないが、それでも多くの人がいた。
それに対して、駸邪は多少驚くも落ち着いて目で席を探す。視力は誰よりも自信がある彼にとって、遠くまで見るのは朝飯前だった。
それを信用しているのか、無表情で待つキャリンと笑顔で待機するメイサ。
すると、すぐに
「・・・見つけました。・・・こちらです、お嬢様。」
席を見つけたのか、駸邪はそう言って二人を誘導する。

その後、無事に席に着いた一行は駸邪がカウンターから持ってきた三人分の朝食・・・クロワッサン一個とイチゴジャム、飲み物のホットチョコレートをそれぞれ食す。
ちなみに、この食事は昨日も同じメニューで彼が決めたわけではない。
キャリンがフランスにいた頃からの親しんだ朝食である。
その食事が終えた一行は食堂を出て、自分たちの教室『1−F』に向かって行った。

『1−F』に着いたお嬢様一行は執事が教室への引き戸を開ける。
そして、それにキャリン、メイサと入り最後に駸邪が入室して戸を閉める。
引き戸を閉め終わった彼は教室側に振り向くと、中には誰もいない。
どうやら、キャリンお嬢様一行が一番に着いたようだ。
駸邪は誰もいない事が不安に思ったのか、内ポケットから懐中時計を取り出す。
時刻は八時三十分・・・。
昨日より早めに着き、どうやら他の生徒はもう少し遅く来るようであった。
「・・・少し早めに・・・着きましたね・・・。」
「構わないですわ。遅く着いて、恥をかくよりはマシですわ。」
キャリンはそう言うと、自分の席に行こうと向かうが、後五歩で着くところで無表情の顔が怪訝な顔になって止まる。
なぜなら、お嬢様一行の机の上になにやら手のひらサイズのメモ用紙が置かれていたからだ。
だが、彼女達だけじゃない。他に、レムお嬢様一行。美夏と燎閃の机の上にも置かれている。
駸邪は主の憂いを取り去ろうとキャリンの前に出て、自分たちの席に向かい、そのメモ用紙を取る。見ると、どうやら何か書かれているようだった。
駸邪はそれに目を通すが、その瞬間滅多に表情を変えない彼が眉間にシワを寄せる。
キャリンはそれを見て、自分の執事が珍しく顔に反応を示しているので声をかけた。
「シンヤ。どうかなさったのですの?」
「・・・お嬢様、これを。」
駸邪は自分の主にそのメモ用紙を渡す。
キャリンはそれを受け取り、紙を見ると彼女もまた眉間にシワを寄せ、彼と違い顔全体から明らかに怒っていると分かる表情をする。
そして

「あのインスティテュゥタァは何を考えているんですの!!?」

そう怒鳴って、紙をそのまま投げるが、真っ直ぐ飛ばずヒラヒラと空中で踊る。
そして、ちょうど良くメイサの所に行き、彼女はそれを取ってメモ用紙を見る。すると、いつも笑顔を絶やさない彼女も表情からそれが消え、眉間にシワを寄せる。
こうも三人の反応を怒りに変える、紙に書かれた内容は・・・


゛九時半から私の歴史の授業の時間なんだけど、いちいち移動するのめんどくさいから出席確認はあなた方、学級委員に任せるわ。名簿は教卓の中に入っているからよろしくね☆


あなた方の担任回答 礼より″




33/54ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!