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エシホ学園の日常
仲裁?
キャリンの仲裁に最初に反応したのは奨であった。
「おっ!誰かと思えば、あの貴族の」


バチン!!


「奨様。何度、言えばわかりますか?」
奨がキャリンに近付こうとすると、またもやメイサの手に鞭が握られ、それでニッコリとした表情で威嚇する。
対して、奨は今回は驚きの表情で何も言わず、後退りする。
「・・・関係のない奴は黙っててくれないか?」
続いて、仲裁に反応したのは執事服を着た男性で、不愉快そうな顔でその黒く澄んだ瞳でキャリンを見る。
それに対し、彼女はムッとした表情で反論する。
「ここは学舎でこんな所での喧嘩行為は恥ずかしい事ですわ!!」
「それはお前らがだろ?俺には関係ない。」
「なんですってですわ!!」
消邪と呼ばれた男性の反論にキャリンは怒りを示す。
すると、彼の後ろにいる女性が困った表情で止める。
「ちょ、やめようよ、消邪君。」
「止めるな、明。こいつには、一回痛い目を遭わせないとダメなんだ。」
そう言って、奨の方に向く消邪。
相手も、やるのか?というようにガンをとばす。
そのやり取りを見たキャリンは止めようと駸邪に命令を下す。
「シンヤ!なにがなんでも止めなさいですわ!!」
「ウィ、モン スェイグナァ。」
駸邪はそう言うと、消邪と奨の間に素早く無理矢理に入り、両手を互いに突き出して二人を離れさせる。
「・・・・・・止めるな。」
「・・・キャリンお嬢様の・・・ご命令なので・・・。」
「俺は別に相手してやってもいいんだぜ?」
「・・・お前は黙ってろ。」
奨の一言が不快に思ったのか睨む。
すると、相手はその目に怖じ気づき、口をつぐんでしまう。
「どうしても止めると言うなら、お前から倒すぞ?」
「ちょっと、消邪君!」
「・・・やれるものならどうぞ。」
駸邪がそう言うと同時に、消邪は不愉快そうな顔で睨みつけ、右拳を振りかざす。
その表情を見た奨は小声で、こいつはやべぇ・・・と絡むんじゃなかったと後悔する。
だが、駸邪は相変わらずの無表情のままで素早く消邪の攻撃に反応する。
まるで、彼の行動が子供騙しだと言わんばかりの目線を送りながら。
そして、右拳が駸邪の顔面に向かっていくが、空を切る。
消邪は一瞬動きを止め、目だけで相手がどこに行ったか探す。
目線を前、右、左、下と動かしていると、彼は駸邪を見つける。・・・が、それと同時に目を見開く。
なぜなら、駸邪は両手を背中の方に突き出して、まるで今からバク転でもするかのような体勢で後ろに倒れ込んでいるからだ!

(こいつ・・・できる!)

そんな駸邪の行動に消邪は驚きを隠せなかった。
なぜなら、今までこんな避け方をする人間はテレビや映画でしか見たことがないからだ!
そして案の定、駸邪はバク転して消邪の拳を避けると同時に、左足で彼の右手首を蹴りあげる。
まるで、狙ったかのように!
バク転をした駸邪は無事体勢を整え成功させる。
対して、消邪は蹴られた右手を抑えていた。
「消邪君!!」
一部始終を見た女性はその暗くだけれども青く澄んだ海のような瞳をウルわせながら、彼に近付く。
目は消邪の手の方を向き、表情は他からもわかるぐらいに心配そうにしている。
そんな時
「はいはい、そこまで!」
ミケが他の人を退かせながら前に行き、四人を見る。
「もう奨君!誰彼構わず、ナンパしない!!女性が迷惑そうな顔をしていたら、さっさと退く!分かった!?」
「お、おぅ」「おぅじゃなくて、はいでしょ!?」
「は、はい・・・。」
先ほどの駸邪の動きに驚いたのか、呆然としていた奨はいきなり話しかけられた事により、半端な返事をしてしまう。それをミケに怒られてしまったため、彼は言い直しすっかり意気消沈していた。
まるで、その図は姉が弟を叱っているようなものだった。ミケにとっては、彼のような弟は願い下げだろうが・・・。ひとまず、そんな絵に周りは見えた。
ミケはそんな眼差しを気にせず、次に消邪の方を向く。
「君もすぐに喧嘩腰にならない!無視するなり、他に方法があったでしょ!?」
「・・・何も関係ないお前なんかに」「しょ、消邪君、やめようよ。」
反論しようとする消邪を女性がまた喧嘩にならないよう、目に涙を浮かべながら止める。
それを見た彼は、チッ・・・と舌打ちをすると、不愉快そうな表情で謝る。
「・・・・・・すみませんでした。」
「今度からは気をつけなさいよ!ほら、もう行った行った!」
ミケが帰ってもいいよという意味を含めて、そう言うと奨はそそくさと立ち去る。
消邪は駸邪を睨んだ後、そのまま玄関に歩いていく。その後ろを女性が慌ててついていく形で去っていった。
キャリン達一行はそれを見届けると、ミケは振り向き駸邪を見ながら口を開く。
「駸邪君!止めるのは良いけど、喧嘩の売り文句に買い文句で答えてどうするのさ!?あれじゃあ、喧嘩を止めるつもりが、自分で喧嘩を引き起こしてるよ!!」
「ま、全くでございますわ!!あの行動はゴイル家の家紋を汚しているようなものでしてよ!?」
ミケの指摘に、キャリンもそうだったとわかる表情で彼女に便乗する。どうやら、ゴイル家のお嬢様はあれで満足しようとしていたようだ。
それに、ミケは呆れながらキャリンを見る。
「・・・すみません、ミケさん。」
対して、指摘された駸邪は無表情ながらも素直に謝る。
そして、キャリンの方に向き
「・・・申し訳ございません・・・お嬢様・・・。次は注意致します・・・。」
「えぇ、次からは気をつけなさいですわ。」
駸邪の言葉を満足気に返すキャリン。
ミケはそれにほとほと呆れていた。
「はぁ・・・・・・まぁ、いいや。私達も早く寮に戻ろう。」
そう言うと、ミケを先頭に一行は再び、体を休めるために寮に向かうのであった。



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あきゅろす。
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