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エシホ学園の日常
同じ行動
それから、食事を終えた一行は全員、今日はもうこれでここ学舎にいる用事はなく、後は寮に戻るだけという事をお互い知ると、ミケの提案でこのまま一緒に帰る事になる。
そして、食堂を出て玄関に向かうと、それに続く廊下の途中で足を止める。
なぜなら、止まったその先には二人の男性と一人の女性がいるのだが、なにやら様子が変だからだ。
それは例えるなら、一組の男女にいちゃもんをつけるチンピラのような図・・・。
ちなみに、キャリン達一行の一部分の人達の中にはそのチンピラ役には見覚えがあった。

「離れろ、ゲス野郎が。」
「おいおい、初対面の奴にゲス野郎は失礼じゃねぇのか?」

(・・・また奨か。)
(あの子、またナンパしてる・・・。)

駸邪とミケは呆れながら、その様子を見る。

本日、四度目・・・・・・いや、駸邪が知らないだけでそれ以上しているかもしれない、彼のナンパ行為。

よくも飽きないものだと駸邪は奨に冷ややかな目線を送りながら、思う。

「・・・てめぇ、そんなにしつこいと・・・・・・。」
「け、喧嘩はダメだよ、消邪君!」

奨のあまりのしつこさに白いYシャツに黒いネクタイ、その上に燕尾服を着て、下は黒いパンツを穿いた執事風の男性が怒りだそうとしている所を、上は白いブラウス、下も膝幅まである白いスカートというその人の清純さを表したような服装をした女性が彼のすぐ後ろから喧嘩を止めようと声をかける。

(・・・さて、どうしたものか。)

これはほっといて先に進んだ方がいいのか、それとも奨を少し懲らしめた上で喧嘩を止めるか駸邪は迷っていると、彼の眼前に金髪の女性が入る。
そして


「喧嘩はやめなさいですわ!!公衆の面前だというのに、恥ずかしくないんですの!?」


金髪の髪を持っているキャリンが喧嘩の仲裁を行った。
それに対して、周りはそれぞれ違う反応を示す。

メイサは全くの無表情だったが、駸邪は目を見開いた状態で彼女を見た。なぜなら、彼が知っているキャリンは明らかにこういうめんどくさそうな出来事は自分から入らないし、むしろ放っておくタイプ。なのに、自分から進んで喧嘩の仲裁を行うのは予想外であった。
レムの使用人は怪訝な表情でキャリンを見る。けれど、主だけは違った。レムはなにやら爪を噛みながら、キャリンを見る。まるで、獲物を横取りされたかのように。
燎閃達も駸邪同様、驚きの表情で彼女を見る。なぜなら、昔からキャリンを知っている燎閃だけに限らず、美夏も感じていた事だが、あの貴族は自分から進んで敵を作るタイプだと思い込んでいた。その証拠に今日だって、キャリンには自覚はないが、挑発的態度を取った。にもかかわらず、喧嘩の仲裁を行うという光景を見て、まさかこんな事をするとは思ってもいなかった。
秋もまたメイサ同様無表情であったが、ミケはなにやら感心しているような表情で彼女を見る。キャリンとは先ほど知り合ったばかり。だから、彼女の事をあまり知らないミケは゛進んで喧嘩の仲裁を行えるんだな″と評価をしていた。

そんな様々な視線を受けるキャリンは顔が少しにやけていて、どこか気分が舞い上がってそうな雰囲気を醸し出す。
というのも、彼女の憧れであるフェネと同じ行動を今、自分がしているという一点に高揚感を覚えていた。
だから、現在のキャリンの心の中はそれだけで幸せに満ち溢れているのである。

・・・だが、相手がそれだけですんなりと喧嘩をやめるというのは、当の本人は全く予想をしていなかったのであった。



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あきゅろす。
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