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エシホ学園の日常
聖母
生徒会長室に入った五人は室内を見渡す。

生徒会長室の部屋の広さは十畳で生徒会室と同じく正四角形であった。
そして、部屋の真ん中に事務机と椅子。部屋の奥には木の立て掛けにそれぞれ絵が6枚、置かれていた。

キャリンとレムと美由は6枚の絵を見る。描かれている絵はそれぞれ違うも共通しているものがあった。
それはどの絵にも髪が焦げ茶色の長さが肩まであり、微笑んでいる表情の女性。
キャリンはそれをまじまじと見つめながら、呟く。
「・・・・・・゛聖母″。」
「えぇ。・・・゛ラファエロ・サンティ″はご存知で?」
「知っておりますわ。ルネサンス時代を代表する画家で、それまでにあった芸術手法を統合、洗練して、女性的で優雅な様式を確立した、『総合芸術の天才』とお聞きしておりますわ。」
「えぇ、その通りです。私、ラファエロの絵画が好きで特に『大公の聖母子』『美しき女庭師』がとても気に入っておりますから、こうやって模倣をしますけどもやはりなかなか彼の絵に辿り着けません・・・。」
フェネはキャリンとそう会話しながら、ある一枚の絵画の前に行く。
その絵の内容は女性が左に赤ん坊を抱きかかえながら、その子を微笑んだ表情で見るというものでその二人には頭の上に円い輪が描かれていた。
「・・・あたしは絵には詳しくありませんが、充分上手いと思いますよ。西洋画独特の筆遣いで綺麗ですし。」
「うふふ、ありがとう、京谷。でも、自分ではまだ何か物足りないんですの。」
「・・・生徒会長は絵がお好きでエシホ学園に入学したと言っておりましたが、当時の絵の実力は?」
「フェネお嬢様の当時の絵の実力はこの学園の特待生として許される程でございます。」
「ヴェル。特待生に許されたのは真実ですが、それで絵画の実力が高いに繋がりません。」
レムの疑問に答えた燕尾服を着た男性がそう言うと、フェネが注意する。
ヴェルと呼ばれた彼はその言葉を笑顔で対応する。
「申し訳ございません、お嬢様。ですが、この学園の特待生になるというのは簡単ではございません。それ相応の世界に通じる実力でないとなれませんので、それが一番分かりやすいかと思いまして。それにお嬢様の絵の実力は当時より一段と上達しております。ですので、もう少し自信を持ってもよろしいかと。」
「ありがとう、ヴェル。でも・・・・・・私は自分の絵に物足りなさを感じますの。特に・・・」
フェネはそう言いながら、自分が描いた6枚の絵を見ながらこう呟く。



「・・・・・・愛が・・・。」





◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆





八人が生徒会長室に入るのを見届けた三人は少しの合間、お互い喋らずにいた。
駸邪はこれからどうするか少し頭の中で整理して、まず何をするかを決めたら実行に移した。
「・・・それで燎閃と美夏は・・・なんでこの学園に・・・入学したの・・・?」



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あきゅろす。
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