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エシホ学園の日常
波乱
食堂に行き、朝食を食べ終えたキャリンお嬢様一行は自分たちのクラス・・・・・・『1−F』を目指す。

クラスの場所は階段を通り過ぎ、食堂の方に向かわずに校舎の正面から見て右側に位置する。

三人は廊下を歩いていき、゛1−G″という立て札を上に貼ってある部屋を通り過ぎ、隣の教室に入る引き戸に立つ。
駸邪は確認のために上を見る。
そこには、゛1−F″と書かれた立て札が貼ってあった。
執事はそれを確認すると、引き戸を開けキャリン、メイサ、駸邪という順で入る。

教室に入った三人はまず目についたのは外からでも目立っていた隙間なく並べられている窓。
そして、縦列五列横例六列に置かれている四角い学習机と椅子。その正面に横一杯に広がり白いチョークで文字が書かれている黒板。
また、先着に左隅の窓側で二人の男女が、女性の方は座り男性の方は立ちながら談笑していた。
駸邪は窓、机と椅子、黒板そしてその人達を見るがその瞬間、目を細める。
なぜなら、見覚えがあるからだ。

男性の方はボタンでなく紐で前を閉めるという特徴の赤い中国服と赤い布のズボンを穿いていた。
また、容姿は黒の短髪で人なつっこそうな純粋とした黒い瞳を持っていた。

女性の方は右斜め上に紐で縛るタイプの中国服を着ていて、腕の肌を露出しており、白い布のズボンを着ていた。
容姿は目はパッチリとしており端正な顔立ちだが、何者にも屈しないような気が強そうだと思わせる黒い瞳の持ち主。
そして、黒髪で頭の両側に団子形を作り、そこから三つ編みにされた髪を腰までに下げていた。

そんな二人を駸邪は見ていると、相手の方もキャリン達に気付いて駸邪の方を凝視する。
そして、椅子に座っている女性は呟く。
「・・・・・・駸邪?」
すると、男性の方も駸邪に近付きながら喋りかける。
「おぅ!駸兄貴じゃないか!!正月以来だな!!・・・・・・・・・もしかして、後ろにいるのはキャリンか?」
「そうでございますわ。あなたは確か・・・・・・リョウセンでよろしくて?」
「そうだぜ!久しぶりだなぁ!!十二年振りか?よく覚えていたな!」
「モリビト六兄弟の赤といえば、あなたですわ。色さえ覚えれば、後は名前を覚えるだけでしてよ?」
「そっか!キャリンも特徴的な髪と瞳をしているから、俺もすぐわかったぜ!!あっ、駸兄貴!美夏(みか)、覚えてるよな?!あそこに座っているの美夏だぜ!」
リョウセンが指差す方向を三人は向くと、美夏と呼ばれた女性は椅子に座りながら、駸邪の方をチラッと見てすぐに俯きモジモジしていた。
「・・・うん。・・・覚えてる。」
「そっか!そしたら、おーい、美夏!!お前もこっち来いよ!!」
彼は彼女にそう呼び掛けると、端から見たら仕方なそうにふぅ・・・とため息をはき、立ち上がる。
そして、リョウセンの所まで行き、駸邪の前に立ち、少し顔を赤らめ身じろぎしながら
「ひ、久しぶりね、駸邪!元気にしてた?」
「・・・うん。・・・元気にしてた。」
「そ、そう!それにしても、最後に会ったのは十二年前っていうのによく覚えていたわね。」
「・・・燎閃(りょうせん)が教えてくれた・・・というのもあるけど・・・美夏自身・・・当時の面影があったから・・・。」
「そ、そう!」
美夏はふ〜んと納得しながら、駸邪を見る。
そして、次にキャリンの方を向いて
「それで、その人達は?見たところ、燎閃も知っているようだけど?」
「・・・こちらの人は」
駸邪はそう言いかけると、キャリンに押し退けられ
「わたくしの名前はキャリン・ゴイル。フランスの貴族でしてよ。そして、こっちはわたくしのメイドのメイサでございますわ。」
「はじめまして。お嬢様のお世話をさせて頂いておりますメイサ・ルーンでございます。」
紹介を受けたメイサは一礼をする。
美夏はその所作を見た後、すぐにキャリンを睨みつけながら
「ご丁寧にどうも。私の名前は恒美夏(トスンオ メイシア)。駸邪や燎閃には゛ミカ″って呼ばれているけど、゛メイシア″でも構わないわ。」
「メイサははじめましてだな!俺の名前は守人燎閃!駸兄貴の弟で六兄弟の中で末っ子だぜ!!」
燎閃はそう自己紹介するも、キャリンはそれを無視するように美夏に対して睨み返す。
「・・・あなた。言葉や服装からして庶民でございますわね?そんな者が、わたくしを睨むなんてなんですの?」
「・・・どうして、あなたの事を紹介しようとした駸邪を押し退けたのよ?」
「わたくし自身でもって、自己紹介しようと思っただけですわ。押し退けたのは邪魔だったんですの。それを読めなかった駸邪が悪いですわ。」
「・・・申し訳ござ」「駸邪。なんで、こんな奴に謝るのよ?」
「あら、やですわ。言葉遣いがなっていませんわね。」
「変な日本語を使うあなたに言われたくないわ。」
「をーほっほっほっ!!どうやら、庶民は日本語での貴族言葉を知らないようですわね。」
そう小馬鹿にしながら言うと、美夏は鼻で笑う。
「貴族言葉?ふん!そんな言葉を使わないと自分が貴族であることを証明できないなんて、情けないわね!」
「なっ!これは貴族にのみ許された言葉遣いでしてよ!?」
「そんな日本語、今時使う方がどうかしているわ!一から日本語を勉強して出直してきなさい!!」
「なんですって!!」
「何よ!!」
「おいおい、落ち着こうぜ、美夏。」
「・・・お嬢様。・・・冷静に。」
「そうでございます。それに、この者のお話を無理に聞く事はございません。」
それを聞いた美夏は、次にメイドを睨む。
睨まれたメイサはまるで何かご用で?と言わんばかりに、ニコッとした表情で返す。
「・・・そうでございますわね。わたくしとした事が庶民の話にムキになってしまうとは・・・・・・駸邪、席に案内なさい。」
「オゥイ、モン スェイグナァ。」
そう言うと、駸邪は黒板に目を向ける。
そこに文字が書かれているが、どこに誰の席が座るか示してあった。
・・・どうやら、キャリンは縦三列目で横は前から三つ目の席であった。
駸邪はその隣で廊下側。窓側にはメイサが座る形となっていた。
執事はそれを確認すると、案内する。
それを美夏は駸邪に寂しい目線を送った後に、すぐに近くの二人を睨みつける。
燎閃は何がなんだかわからない顔で見ていて、キャリンとメイサは何食わぬ表情であった。
そして、駸邪はというと、自分の想い人である美夏がこの学校に来ていた事に嬉しく感じると同時に、これから過ごす学園生活・・・・・・特に先ほどのキャリンと美夏のやり取りを見て不安に思うのであった。



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