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エシホ学園の日常
最初の日の出
重く遠くに響く音。
零時を過ぎても除夜の鐘は一定の間を置いて鳴っていく。

守人家では、新年の挨拶、年越し蕎麦を食べて賑わっていた。そして、夜更けによって睡魔に負けて眠る者や後片付けをする者・・・縁側に座って、新年の朝日を見ようとする二人がいた。


駸邪と炯太だった。


二人はお互い誘ったわけではなく、今年最初の旭を見ようと縁側に足を運んだら鉢合わせ。特に会話する事なくそれぞれ座り・・・空の向こうをただただ見ていた。

・・・体が冷えてきたと感じた時、炯太が徐に口を開く。
「・・・・・・キャリンの執事はどんな感じ?」
「・・・いつも通り」
その言葉を聞いた炯太は軽く笑う。
「いつも通りという事は、いつも通りキャリンの我儘を聞いているという事か」
「・・・そういう事」
無表情に言う弟の言葉に、兄は懐かしむ。
「変わらないな、キャリンは。昔とホント、変わらない」
「・・・兄さんは・・・変わったけどね・・・」
炯太はニヤリと面白そうに聞く。
「ふ〜ん、と言うと?」
「・・・昔なら・・・アイドル候補生なんて・・・やらなかった・・・と思う・・・」
駸邪の言葉が面白かったのか、炯太は肩を震わせて笑う。
「確かにやらなかっただろうねっと。まぁ、人に影響されてだねっと」
「・・・人に?」
その疑問の言葉に、炯太は軽く応える。
「俺のいる学校は変わり者ばかりだからねっと。その中でも知り合ったあの三人・・・いや、二人はズバ抜けて変わってるけど、そいつらに影響されたかもねっと」
「・・・アイドル候補生にも?」
炯太は、いやと否定の言葉の後、ゆっくり言う。



「全てだねっと」



「・・・全て」
「そ、全て。そう言う駸邪もかなり影響されてると思うけどねっと。その学園でいろんな人達から。武術でもそうだからねっと」
炯太は相手の疑問を先読みするように言い・・・言葉を止め、色が徐々に変わっていく遠い空を見る。日の出の合図だった。
駸邪はそれ以上、兄と喋ることなく・・・炯太もその後、弟と話す事は無く・・・・・・お互い日の出を見る。
何も変わりなく、ただいつもと変わらない・・・ただ今年最初の、見る日の光を・・・
























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