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エシホ学園の日常
イギリス貴族
キャリンが目覚めのコーヒーを飲み終えると、駸邪とメイサは空になったコーヒーカップ等を乗せた台車を押して一旦、部屋を出る。
そして、メイドは片付けの為に食器と共に自分の部屋に入る。
何分か経つと、メイサが扉から開け出てくると、再びお嬢様の身支度を整える為にキャリンの部屋に行く。
駸邪はお嬢様の部屋から出た後から主の準備が整うまでずっと直立でドアの前に立っていた。
そして、待つこと十分・・・


キィ・・・・・・


先ほどの白い寝巻き姿とは打って変わって、ピンクのフワッとした可愛らしいドレスを着て、ストレートだった髪型を上から下にグルグル巻きした姿でキャリンは部屋から出てくる。
「それでは、参りますわよ。」
「「ウィ、モン スェイグナァ」」

準備が整い、校舎に向かうキャリンお嬢様一行。
寮を出ると、昨日とは違い新入生または在校生と思われる人達が道にちらほら見える。
そして、皆噴水に向かっていた。
お嬢様一行も噴水に行き、着くとそのまま周りと一緒に右の道を進む。

校舎に着いたら、そのまま中に入ると昨日の夕食を食べに入った状況と一緒でたくさんの人がエントランスホール一杯にいた。
ただ、唯一違うのは掲示板の所に一部分の群衆が集まっている事だ。
そして、板の横に立て看板が置いてあり、表には

『新入生、クラス表』

と書かれていた。
「どうやら、どのクラスになるか書かれているようですね。そして、集まっているのは新入生と見ていいでしょう。」
「朝食前でございますが、ついでに見に行きますわよ。」
「・・・かしこまりました・・・お嬢様・・・。」

掲示板に近づくキャリン一行だが、人がたくさんいるため中々見えない。
「もう、見えませんわね。なんとかならないんですの?」
「・・・もし・・・よろしければ・・・私だけ見て・・・どの教室になるか・・・お伝えすることは・・・できますが・・・?」
「わたくしは直接見たいんですの!!」
「・・・かしこまりました・・・お嬢様・・・。」
駸邪はそう言うと、群衆に目を向ける。
そして、前の人が見終わっていなくなると同時に後ろの人が前に行く。
その際、空いたスペースを駸邪は素早く行き、占領すると
「・・・お嬢様、こちらです。」
誘導する。
これでチビチビと前に行けなかったのが、少しだけだが進めるようになる。
そして、二度目の前に行くチャンスが訪れ、再び駸邪は空いたスペースを見つけ、前に進むと
「あぁ!!ちょっと、横入りじゃないの!!」
そんな声が聞こえ、執事は周りを見る。
だが、言ったと思われる人は見つからない。
「ちょっと、こっちよ!!」
今の声で居所がわかった駸邪は顔を下に向ける。
そこには、頭二つほど背が離れている小さい女の子がいた。

その少女の容姿はシルクシャンタン生地で作られた赤紫色のドレスで着飾り、まだ幼いのか丸っこい顔立ちで髪型は茶色を薄くしたような色で、髪の長さは肩までありウェーブがかかっていた。

そのガーネットのような赤い瞳で駸邪を見上げ、膨れっ面でその少女は言う。
「私達が先に並んでいたのに、後ろにいたはずのあなたが来るなんてどういう了見なの!」
「なんですの、この方は?」
キャリンは駸邪に近づきながら、その女の子を見ながら言う。
「・・・あなた、身なりがよろしい所を見ると、貴族なんですの?」
キャリンに話しかけられた少女は駸邪から話しかけた方に見上げ
「そうだけど、そういうあなたも?」
「そうでございますわ。わたくしの名前はキャリン・ゴイル。フランス出身でございますわ。」
「ご丁寧にどうも。私の名前はレム・ヘマト。イギリス出身よ。さて・・・そこをどいてくれないかしら?私達の方が先に並んでいたのよ?」
「あら、それは失礼しましたわ。ですが、譲る事はできませんわ。なぜなら、この場合の並びは早い者勝ちですもの。先にわたくしの執事が前を確保したのだから、当然わたくしが前に行く権利がありますわ。」
「そんなご託はいいから、早く道を開けなさい。あなた、ちゃんと並ぶ事すらできないの?そんな論法が通るなら、先に並ぶ意味がないわ。それが分かったら、退きなさい。」
そうレムはキャリンに向かって、上から目線で言う。
その言葉を聞いていた駸邪は違和感を覚える。
それは、゛上から目線で言っているはずなのに見上げられながら言われている″というものだった。
なんとも不思議な感覚を駸邪は味わう。
キャリンはその言葉を受けると、いきなりにこやかな表情で
「わかりましたわ。どうぞ、前へ。」
道を開ける。
駸邪はそれに怪しく感じながらも、主に習い道を開ける。
対して、レムは分かればいいのよと読み取れる表情でキャリンの前を通ろうとすると


・・・ダンッ!!


レムは転んでしまう。
原因はキャリンが足をかけて、躓かせたからだ。
「「お嬢様!!」」
近くにいた赤髪で腰まであるストレートの髪を持ってメイドの格好をした女性と白い短髪の燕尾服を着た男性、外見が日系の二人がレムに駆け寄る。
「あらあら、貴族ともあろうものが無様に転んでしまうなんて情けないですわね。それに、そんなに背が低いのでは前に行くのも苦労するのではなくて?ここはわたくしが先に前に行きますから、あなたはゆっくり進まれた方がよろしくてよ?をーほっほっほっ!!」
そう甲高く笑うと、周りにいた人達はどよめき離れ出す。
メイサは別に気にしてはいないが、駸邪はそれに対して少し気恥ずかしい思いをする。
レムはゆっくり立ち上がりながら
「・・・・・・貴族だもん・・・。」
と呟き初め
「・・・・・・うっく・・・私が背が低いんじゃなくて・・・ひっく・・・周りが背が高いだけだもん。・・・・・・それに・・・いっく・・・苦労なん・・・か・・・・・・うわぁぁぁぁぁん!!」
そして、泣き始める。
キャリン達三人は無表情だったが、駸邪だけ

(・・・お嬢様、言い過ぎ。)

心の中でツッコむ。
「大丈夫です、お嬢様!その事は私達が充分承知しております!!」
「うわぁぁぁん、麗香[リシアン]!!」
レムはそのメイドを麗香と呼び、泣き付く。
そして、キャリンに指を差しながら


「龍虹[ロンホン]!!ヘマト家の力をあのフランス貴族に思い知らせてやって!!」



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