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エシホ学園の日常
境遇
「・・・お母様との約束ですか?」
駸邪はキャリンの言葉を反復すると、彼女は頷く。
「メイサは今は『ルーン』という苗字を名乗っておりますけども、お母様の話に寄れば元々は捨て子で名前も分からなかったらしいですの。」
執事は直立のまま、表情を変えずそのまま聞く。
キャリンはコーヒーを持って一口飲み、一呼吸置いてから話し続ける。
「お母様がメイサを見つけたのは、晩餐会の帰り道。その時の季節は冬でその日も雪がちらほらと降って、辺りが銀世界になっていた時期ですわ。お母様は何気なく車からその光景を見ていて、公園をよぎろうとした時、ベンチの上に何か置いてあるのを見つけたようですの。それで車を止めさせ、よく見てみますと大きめのバスケットが置かれていたらしいですわ。周りに人気がないのに、雪があまり被っていない所を見たお母様は置かれたばかりだと思い、気になったのか使用人に様子を見に行かせましたようですの。使用人はそのままバスケットに近づき、中身を見ますと慌ててお母様の所に戻ってきたらしいですわ。そして、お母様にこう言ったようですの。゛捨て子です″と。お母様はそれを聞きますと、自身も外に出て、中身を見たらしいですの。中には白い少し厚い布で大事に包まれ眠っているベベ[赤ん坊]と寄り添うように赤い鞭が入っていたようですわ。お母様はそれを見た後、すぐに使用人に近くに人がいないか足跡がないかと探させましたわ。結果、辺りに人はいなく、バスケットを置いた人の足跡だと思われるものは見つけましたが、雪で足跡が途中なくなったようですの。その報告を聞いたお母様はそのベベを見捨てる事はできず、どうするか困ったらしいですわ。そして、思いついたのがゴイル家に使用人として居させる事ですわ。お母様は早速、自分の身の回りの世話をしてくれているメイドの所にその子を養子にさせましたわ。そして、メイサを完璧なメイドにするべく、その使用人は養育として七年、暇をもらってメイサと共に実家に帰りましたわ。それから、七年経って、暇をもらった使用人はゴイル家に帰ってきて、その隣にはメイド服を着たまだ幼いメイサも一緒でしたわ。その時、わたくしはお母様に連れられ、メイサがいる部屋の前でお母様からメイサの事を説明され、その時゛絶対にメイサを困らせてはダメですよ″と約束しましたの。わたくしはお母様の言う事に了承しますと、部屋に入りましたわ。それが、わたくしとメイサの初めての出会いですわ。それから、メイサはわたくしの身辺の世話をする使用人になったんですの。」
「・・・では・・・メイサは・・・なぜ・・・鞭を持っているのですか・・・?」
「わたくしが初めて会った時から持っていましたわ。理由を聞くと゛お嬢様の身辺のお世話をさせていただくと共に警護をするためでございます″と言ってましたが、わたくしは嘘だと思いますわ。本当は、自分を捨てた親の持ち物だと思い、肌身離さず持っていたいだけだと思いますの。そして、鞭を扱い慣れているのは親への興味。おそらく、あの鞭は親が使っていたもの。親と同じく自分も扱い慣れれば、それだけで共通点が生まれますわ。だから、メイサは鞭を持っていると思いますの。」
「・・・親への興味ですか。」
駸邪は顔には出さなかったが、心の中ではあまり理解できなかった。
だが、それと同時にそれもそのはずと彼は思う。
駸邪はフランスに留学していたとはいえ、一年に一回は実家に帰っていた。
メイサと違い、親の顔も知っているし会ってもいた。
彼女は親の顔も知らないし、会ってもいない。
この境遇の違いにより、メイサの心情を理解するのは到底不可能だった。


キィ・・・


その時、部屋の扉が開く。
入ってきたのは牛乳が入っているであろう陶器製のポットを持ったメイサであった。
「お待たせしました、お嬢様。もうお入れになりますか?」
「お願いですわ。」
キャリンの許可をもらったメイドはまだ黒い液が残っているコーヒーカップにポットから牛乳を注ぐ。
すると、みるみるうちに黒と白が混ざっていく。
そして、今まで温めていたのかカップから湯気が出ていた。
駸邪はそんな主に奉仕をしているメイサを見ながら、心の内で

(・・・実際は・・・親に対して・・・どう・・・思っているんだろう・・・?)

と考えるのであった。



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あきゅろす。
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