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エシホ学園の日常
フランスの夏休み
[お帰りなさいませ、お嬢様]
黒い車の前に立つ男性はそう言いながら、深々と礼をする。それに、キャリンは珍しくニコリと笑顔を見せる。
[出迎え、ありがとうございますわ、サトウ]
サトウと呼ばれた男は顔を上げ、お疲れでしょうと後部座席のドアを開け、お嬢様を迎える。そして、そのままキャリンは車に乗り込み続いてメイサ、なぜか緊張気味に少しぎこちなく歩く駸邪が入る。
三人が乗車し終わるのを見届けたサトウはドアを閉め、自身も助手席の方に向かう・・・










◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆











[それで、貴族も庶民も休日を楽しんでおります]
サトウは後部座席・・・キャリンに向けて、フランスの今の状況を説明すると、お嬢様は興味無さそうに人通り、車通りが少ない街並みを眺める。
[という事は、一部の貴族からは別荘のパーティーに招かれる可能性があるわけですわね。主に暇な人に向けて]


 フランスに取って8月とは『誰も働かない月』となっている。と言うのも、学生は早々7月から休みに入り、9月まで続く。その為、中流家庭では、子供の学校の休みに併せて休暇を取る両親が多く、それが最も顕著になるのが8月なのだ。フランス人の場合、有給を取る、ということは家でゴロゴロすることではない。
それは即ち、バカンスに出る。
なので、海外にしろ、国内にしろ、どこかしらに出かけることを意味する。ごろごろするにしても、出掛け先でするのだ。そして、バカンスに出るということは、家を最低でも1週間は空ける。半月でも珍しい事ではない。学校では3学期の終わる6月には、必ずバカンスの話が出て、クラスメイトに『パリに残る』と答えた時は、同情のこもった眼差しを向けられる。パリに住むフランス人の多くは全国的に見ると中流から上流階層に属するので、8月中パリに『残る』人なんてそうそういないのだ。


その言葉にサトウは困ったように苦笑いを見せる。
[そうですね。お嬢様はどうされます?もし招待状がきましたら?]
それを聞いたキャリンはキッとサトウの方を睨む。
[絶対に行きませんわ。どうせ自慢話をされる上に気持ち悪いご機嫌取りを受けるのは嫌ですわ]
[かしこまりました]



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