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エシホ学園の日常
脅し
「おっ!良い女、見っけ♪」
廊下近くの席に一人で座っていた少年が立って話しかけてくる。

容姿はダボダボの茶色いズボンにダルッとした白いTシャツ。
黒髪の短髪で据わった目つきに電灯という明るい光のおかげで黒い瞳の持ち主だとすぐにわかる。

「なぁ、そこの金髪の姉ちゃんにメイドさんよぉ。俺と一緒に食事しねぇか?」
キャリンの性格を知っている駸邪はその言葉を聞きながら、笑いそうになるのを我慢する。
「何ですの?この庶民丸出しの男性は?」
対して、キャリンは不愉快そうな表情でボソッと言う。
だが、それが聞こえたのかニヤニヤしながら
「まぁ、そんな事言うなよ。俺の名前は爆乱 奨(ばくらん しょう)!この学園に日本一の花火職人として認めてもらった特待生で新入生だ!」
それを聞いたキャリンは辟易させながら
「まさか、こんな方と一緒の新入生だとは・・・。」
小さい声でそう言うも相手にはしっかり聞こえていた。
「おっ!姉ちゃんも新入生なのか!見た所、お嬢様みたいだな。ここは新入生同士、なかよ」


バチン!!


奨がキャリンに近づこうとした瞬間、彼の前で何かが振り落とされ、すぐにメイサの手元に戻る。
彼女の手にはいつの間にか鞭が握られていた。
「・・・あ、危ねぇじゃねぇか。言っとくが、俺にはそっちの趣味はねぇぞ。」
奨は乾いた笑いを顔に浮かべながら言うが、メイサは恐ろしいほどのとびっきりの笑顔で
「キャリンお嬢様の半径2M範囲以内に入ろうとしましたら、容赦は致しませんのでご了承下さい。」
鞭をビンと引っ張りながら言う。
駸邪はそのやり取りを見ながら、周りに人がだんだんと多くなり見物している事に気付く。

(・・・このままでは・・・キャリンお嬢様の沽券に・・・関わるな・・・。)

駸邪はそう思い、メイサの脅しでたじたじになっている奨に近づき
「な、何だよ?」
自分の顔をすぐに彼の顔に接近して
「・・・ぼーっとしてないで・・・早く道を開けろ・・・。」
相手にしか聞こえないよう小さい声で言う。
駸邪の目つきは元々鋭く、世間一般的に言えば怖く見える。
しかも、近づきにくいオーラを放っているので、それも相まってか迫力はあった。
奨はそれに驚いているのかそう言われた後、体が硬直しているのかと言わんばかりに非常にゆっくりと横に移動して道を開ける。
そして、メイサに言われた通り、キャリンの2M範囲内に入らないよう遠くまで。
それを確認した駸邪は無表情のまま、お嬢様の方に向き頭を下げながら
「・・・大変・・・申し訳ありませんでした・・・。・・・遅くなりましたが・・・席に案内致します・・・。」
「全くですわ。早く案内なさい。」
「ウィ、モン スェイグナァ。」
駸邪はそう言うと、奥の席に行く。
彼はどこがいいか目で探すと、周りには人もいなくカウンターからあまり遠くない場所を見つける。
駸邪はそこまで行き、椅子を下げキャリンを座らせると
「・・・それでは・・・食事を持って参ります・・・。」
「・・・シンヤとメイサの同席での食事はここでは許しますわ。一緒に食事を楽しみましょう。」
「・・・ありがとうございます。」
「それと、わたくしとあなた達の食事のメニューは別々に考えなくてもよろしくてよ。同じ献立で構いませんわ。」
「・・・かしこまりました・・・お嬢様・・・。」
駸邪はそう言うと、カウンターに向かいながら

(・・・先ほどの件で・・・お嬢様は・・・イライラしているから・・・何か柔らかい食べ物が・・・いいだろう・・・。リゾットだな・・・。・・・そして・・・それに合うのは・・・鳥肉のスープ・・・。・・・デザートに・・・クリームケーキが・・・いいだろ・・・。)

カウンターに着くと同時に、今日の夕食のメニューを考えた駸邪は相手にそれを伝えるのであった。



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あきゅろす。
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