[携帯モード] [URL送信]

エシホ学園の日常
有頂天
そう言われた瞬間、キャリンの時が・・・・・・止まった。ついでに・・・レムも止まるが、彼女の場合は思考の停止。キャリンだとそれも含まれるが、同時に自分の瞳に映っている全てが一瞬固まり、今どういう表情をしているのかも自覚できないほどであった。例え目を丸くし、口を少し開けてしまっていたとしても。
そんなキャリンの可笑しな表情に対し、フェネは気にせず嬉しそうにニコニコしながら、口を開く。
「あなたの作品からは日本の・・・過去から伝わる伝統の素晴らしさを頂きました。また、あなたの絵に描かれています・・・キャリンのその風景に対する想いも感じました。大変、感動されたんですね。明るいイメージで描かれた街並み、柔らかな筆遣いそして色使い。短い間でかなり上達されましたね。本当に素晴らしいです。感動しました。」

高評価・・・・・・

ボーン先生からもそうだが、フェネからも色使いが濃いとキャリンは指摘されていたが、今回の作品でそれがなくなったばかりか技術が向上した、素晴らしい、感動したという言葉が生徒会長から出る。
それを受けた・・・キャリンは・・・・・・最初は先ほどと変わらない表情をしていたが・・・徐々に口は閉じていき・・・最後はニヤリと頬を上げ、目に活気が満ちていき・・・


「をーほっほっほっ!!当然ですわ!!わたくしの手にかかれば、すぐにできますですわ!!!」



有頂天。

今の彼女に合う言葉があれば、それであろう。憧れの人からお誉めの言葉。それだけでキャリンの頭を喜びと嬉しさと満足感で満たせるには充分の効果があるだろう。
それを端から見ている・・・駸邪は少し引いていた。なぜなら、生徒会長の目の前でその発言だからだ。また怒られるのでは?と不安を持ちながら、駸邪はフェネの顔色を窺うが・・・先ほどと変わらず、微笑みの表情。どうやら、素直にこういう風に喜んでも問題無いようであった。
「フェネ生徒会長。わたくしの従者の作品もありますが、いかがでございましょう?」
すると、キャリンは嬉しそうに歓喜に満ちた表情のまま、自分の作品の隣に二つ並んでいる絵を指差す。そこにあるのは・・・駸邪とメイサの作品であった。

駸邪の作品は東山の円山公園の山の上にて眺めた京都市風景。一つ一つの建物を細かく描いており・・・・・・遠くから見れば、白黒写真か?と思うほどの正確さであった。
次に、メイサの作品は・・・人。早乙女家にて見た、使用人の・・・襖を開いた時の姿勢が描かれていた。顔の向き、視線そして体の各所のその時の動作が綺麗に描かれていた。まるで、美しさを残すかのように・・・

それらをキャリンから作品の出来はどうかと聞かれたフェネは・・・その二つの絵に向き、一点一点に視線を移し見る。丁寧に作品の細かな所も全て・・・・・・。
その様子をキャリンはニヤリと自信に満ち溢れた表情で見守る。自分の従者の絵の評価が悪くないはずだと言わんばかりに・・・。対して、二人は・・・少しドキドキしながら、フェネからの評価の言葉を待つ。なぜなら、もし悪ければ・・・キャリンの顔に泥を塗ることになる。しかも、今の状態は有頂天。その喜びが二人のせいで損なう事になれば、駸邪はおろかあのメイサでさえもこの後、キャリンから失敗を責められる事になるだろう。
生徒会長から最初は高評価を貰ったのに、あなた達のせいでそれがなくなったと。
そんな事にならないよう二人は頑張ったが・・・・・・頑張ったからと言って、それも評価されるわけではない。この時、今目の前にある作品だけ見られるのである。それが駄目だった場合は・・・・・・と、その後の事を想像した二人は恐怖で身震いする。今まで他人事のように見てきたあの怒声が自分に向けられたら・・・と・・・。
そんな三人をよそにレムは未だにフェネを見ながら、呆然。麗香はどうしたのだろう?と心配そうに小さい主を・・・見下ろす。麗香の方が背が高いため、仕方ないのだ。

そんなそれぞれ違う思いを胸に抱いていると・・・フェネが見終わったのか、キャリン達の方を見る。それに、駸邪とメイサは表情は変えなかったが、ドキリとし・・・キャリンは頬を上げ自信満々な表情で相手の言葉を待ち・・・・・・フェネは評価の言葉を発する・・・



37/40ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!