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エシホ学園の日常
一瞬
それは一瞬であった。
マリーが突然のその言葉を理解しようとした時の束の間・・・・・・駸邪は懐から手のひらサイズの折り畳み式ナイフを取り出し、それでワイヤーを切る!そして、ちょうど開こうとしているエレベーターの扉に向かって走り、中から人が出てくるのを入れ替わりに彼はそこに入って、一階に指定し閉める・・・・・・


「・・・・・・・・・」


その間、マリーは横に人が通り過ぎていくのに気付かず呆然と・・・切られたワイヤーが残る廊下を見る事しかできなかった・・・


・・・・・・・・・・・・一瞬の出来事・・・。
マリー自身予想はしていたが、駸邪の事だからすぐに使うだろうとしか思っていなかった。だから、ワイヤーの前で為す術もなく立っているように見えた相手に彼女は何も持っていないと決めつけてしまったのだ。本当はナイフを持っているのに・・・。
ちなみに・・・なぜ駸邪はナイフを持っていたかというと、彼の主キャリンから何かを切るよう命令された時、すぐに実行できるように常時所持しているのである。そして、帰る道をワイヤーに阻まれた際、すぐに使わなかった理由はマリーもそれに警戒しているかもしれないと用心し・・・彼女が油断している時に使用しようと考えていたのだ。結果、マリーは駸邪が帰るのを諦めてこっちに来ると思い込み、彼はその事をチャンスだと感じ・・・エレベーターもちょうど上がってきているのを確認して実行。見事、逃げ出す事に成功したのである。


「・・・・・・・・・」
駸邪のいきなりの行動がショックだったのか、立ちつくすマリー。これで駸邪の事を諦め・・・・・・


「・・・クス♪シンヤったら、恥ずかしがり屋なんだから♪」


るかと思いきや、彼女の愛しい人を見るような目で口元だけクスリと笑う反応を見る限り、諦めていないようであった・・・














◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆















「駸邪さん、遅いですね・・・」
長卓の上で次々とご飯、味噌汁、刺身等のおかずが配膳されている中で花凛が心配そうにキャリンの空いている左隣・・・駸邪が座る場所を見ながら言う。


花凛達は家に着き・・・まだ夕食の支度ができていないという事だったので、各々の部屋で暫し休むことになった。その時、事情を聞いたメイサ達二人や他の人達は食事前には戻ってくるだろうと思っていたが・・・夕食ができてもまだ帰ってきてなかった・・・


「大丈夫ですわよ。わたくしの執事はちゃんと戻ってきますわ。」
「ですが、あまりにも遅くないですか?」
「そうね・・・もうそろそろ戻ってもいいと思うけど。」
「わたくしの執事は何があってもちゃんとわたくしの言うことを聞きますわ。レディをお送りした後は寄り道せずに戻ってきますわよ。もし寄り道をしたらどうなるかという事ぐらい分かっていますわ。」
「しかし・・・」
すました表情で自分の前で鯛の焼き魚が置かれるのを見るキャリンになおも本当に大丈夫かと心配を促す花凛。その時、御膳を用意していたメイサがいつものニッコリとした笑顔で口を開く。
「大丈夫です、カリン様。シンヤはゴイル家の執事として恥ずかしい真似は致しませんので。」
「・・・したら最後ですからね。」
「「「!!?」」」
その時・・・・・・その場にいた・・・キャリンお嬢様一行を除いた人達はギョッとして、あまりの驚きに後退る。
なぜなら、メイサの話に耳を傾けていたら、突然彼女の主の隣にいなかった駸邪が座りながら、メイドの言葉に相づちを打っていたからだ!?
「あら、遅かったですわね、シンヤ。」
「・・・少々・・・帰るのに・・・時間がかかりました・・・。・・・花凛様・・・遅れて・・・申し訳ございません・・・。」
「い、いえ、無事に帰ってこれて良かったです・・・」
駸邪の相変わらずの無表情でそう言われた花凛は少し引き、無理して微笑む。それを見たキャリンはニヤリと相手の反応を楽しむ表情で全員に声をかける。


「シンヤが無事に帰ってこれましたから早く晩餐に致しましょう。」



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