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エシホ学園の日常
現地入り
「そろそろ、行く時間かしら?」
「そうでございますね、お嬢様。」
キャリンはメイドがしたためたドレスや髪のセットを鏡で確認しながら、日本語で話しかける。
それをメイサも日本語で返事する。
「それにしても、お父様が用意してくださる執事とはどんな人でございましょうねぇ。」
だが、キャリンが使っている日本語はどこか変だった。
「一応、一昨日にお電話で屋敷のメイドにホテルの場所を教えましたので上手くいけば今日に来られますね。」
対して、メイサは見事な敬語を使う。

二人が使っている日本語は駸邪に教えてもらったのだ。
キャリンから自分には貴族らしい言葉、メイサにはメイドらしい言葉をとお願いして。
それで、駸邪の感性で貴族らしい言葉と言えばお嬢様言葉、メイドらしい言葉と言えば敬語となったのだ。
二人はこれでフランスにいる内に母国語であるフランス語の他に日本語を覚えた訳なのだが、キャリンが使っている日本語は日本人からしたらおかしいというのは本人は知る由もない。

そして、二人がフランス語ではなく日本語を使っている理由は彼女達はもう日本にいてキャリンが日本語を使うよう提案した為である。
しかも、今回の日本入りは家族に黙って来た。
理由は早めに現地入りして、日本の環境に慣れる為である。
おかげで彼女の父親であるグランは表情を変えずともメイドからメイサの伝言を聞くまで不安で仕方がなかった。
また、駸邪がキャリンの執事になったというのは伝える前に行ってしまったため、二人は誰が執事になったのか知らないのである。

二人はエシホ学園に行く準備ができると同時に


コン、コン・・・


二人がいる部屋のドアからノックする音が聞こえる。
メイサはキャリンに少しお待ち下さいと言った後にドアに近づき、開ける。
そして、相手を確認すると
「何しに来られたのですか、シンヤ?」
「シンヤ?!」
キャリンはメイサの口からその言葉を聞くと、自分もメイドの後ろに立って見る。
二人の目の前には、駸邪がいたのだ。
「何しに来たんですの、シンヤ!?まさか、お父様の命令でわたくしを連れ戻しに参って来られたんですの?!残念でございますけども、わたくしは帰るつもりは毛頭ありませんわ!!さっさと立ち去るがいいですわ!!!」
キャリンの罵声に駸邪は
「・・・キャリンの執事として・・・来たのに・・・随分な言い様だね・・・。」
いつもは滑らかな口調なのに、今回は間を所々空かせながら喋る。
「えっ?」
駸邪の返答にキャリンは怪訝な表情をしていると
「お嬢様。シンヤの服装をご覧になって下さい。」
メイサが駸邪の着ている服を指摘する。
キャリンは相手を細かく見ると、黒い革靴に黒いパンツ、上は白いYシャツに黒ネクタイをし黒い燕尾服を着ていて、そして手には白い手袋をしていた。
「ま、まさか、あなたが?」
「・・・今日から・・・キャリンお嬢様の・・・執事になります・・・守人駸邪です・・・。よろしくお願いします・・・。」
この間が空いた喋り方は日本語ではいつもである。
間が空かず淡々と喋るのはフランス語だけなのだ。
フランス育ちが長いからこうなったのかそれとも元々がそうなのかは本人しかわからないが、駸邪の日本語での口調はいつも間が空くのである。

そんな癖を持った日本語で駸邪は答えると・・・



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あきゅろす。
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