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幻想
10000hit記念小説




「ある晴れた日に」





起床は4時半。
カーテンの隙間から覗く朝日の光を浴び気持ちのよい朝を迎える。今日も1日元気に過ごせそうだ。自室を出て、リビングに向かう。扉を開けると直ぐにトーストが焼けたいい香りが漂ってくる。

「おはようございます」

台所に立つくまさんエプロンを着けた一見頭の正常さを疑ってしまうこの男マクシスに挨拶をする。
出来るならばこの姿を堂々としてしまっているこの男とは関わり合いなど持ちたくはない。しかし、格好と趣味が如何にあれだとしても能力的には目を見張るものがあるから驚きだ。それにもう何年もの付き合いだ。流石に慣れたし驚きもしなくなった。

「おはよう日向。今日も時間ピッタリだね」

食器洗いをしていた手を止め顔を上げた。容姿は悪くはない。いや優れている分類に入るだろう。体格もよく傭兵か何かのように見える。だが実際は魔法使いで、その能力も結構優秀な方らしい。あまり詳しいことは分からないが。黙っていれば絵になる。正にその通りだろう。しかし如何せん趣味が悪い。いや悪いとは言いがたいが、まあ何というかこの男は“かわいいもの好き”なのだ。特に小動物系には目がなく、我が主であるセイ様は正に的中らしい。





私が席に着くと目の前のテーブルに、次々と朝食の準備がされていく。どれも見た目も香りもよく食欲をそそる。これらをこの男が作ったのだとは到底思えない。

「本日はーいつものとちょっと違うとこがあるんだよね。さあそれは一体どこでしょう?」

いつもと相変わらぬこのテンションの高さが時に殺意を覚える。寝起きにはついていけない。無視してトーストにかじりつく。

「何も変わらなかったじゃないですか」

朝食を食べ終わり、席を立つ前に言う。返事が返ってくるものだとは思っていなかったようでマクシスは驚いてこちらを見た。

「ふふふ、今日のは特別日向へ愛を込めて作ったんです」

満面の笑みが怖い。この男のこういう所が苦手だ。時折口にするこの手の冗談には毎度対処に困る。
正直にそれに対して反応を返してやるのも意識し過ぎで過剰反応しているようにも取れる。
しかも反応を返されることをこの男は喜んでいるように思える。だったら無視を決め込んでいればいいのだが偶にそれが返って痛い目に遭うことになる。

「ごちそうさま」

ここは敢えてスルーすることにして、私はカップを置いて足早に執務室に向かった。





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あきゅろす。
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