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幻想
3




こんなことは今まで一度もなかった。たったの十年で世代交代とは早過ぎる。また今回の場合、次の巫女がいないのだ。愁莉は男であるから巫女にはなれない。巫女の不在―――前代未聞の大事件だった。



愁莉は深い溜息をついた。
今日改めて祖母に呼び出され、早く血を残すように言われたのだ。
しかし愁莉はまだ十三しかいかない子どもなのだ。急にそんなことを言われてもと思うし家からの多大なる期待を背負わされ逃げ出してしまいたくなった。
だが人々のためにもそんなことは出来なかった。もしここで自分が逃げたりしたら……愁莉は逃げ出せなかった。

「母様………」

何があったのだろうか。
愁莉は思った。巫女がこんなにも早く変わるなんて愁莉自身も予想だにしなかった。

「僕はどうしたら…いいの…」

無情にも雨は愁莉の頬を打ち付けてくる。恐らく沿岸部は大波に見舞われていることだろう。龍神が巫女の不在を訴えているのだ。巫女を出さなければずっとこの嵐は続く。嵐が続けば農作物は育たず、畜生は死に絶える。いや畜生だけではない。人間もまた滅びることになる。





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