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幻想
10




愁莉には少年が何がしたいのか理解出来なかった。何故己をこの世界に連れてきたのか。何故己に床を伴にせよと命じたのか。しかし愁莉の心には確実に少年に対する兄弟愛なるものが生まれ初めていた。愁莉には兄弟がいなかった為、戸惑いながらも自分より小さい存在である少年を弟のように思えてきたのだ。

そんなある日、少年の元に訪問者が訪れた。
その日は朝から晴れていた。愁莉は目覚めてから晴天を見、洗濯をしていた。
そこへ後ろから声を掛けられたのだ。

「なんだ神那は趣旨替えでもしたんかね、お前わっぱじゃねえか」

後ろから覗き込むようにして突然の訪問者は愁莉に語り掛けた。

「しかも男。っとに神那のやつ……」

声から察するに、二十代後半の男性。蒼髪の黄色の眼、愁莉はその碧の美しさに息をするのも忘れて見入っていた。加えて愁莉は少年と暮らすようになってから他の存在と会うことはなかったため、目の前の人物が新鮮且つ驚愕だったのだ。

「あ、あの…貴方は……」

己より遙かに背の高い相手を見上げながら愁莉は恐る恐る尋ねた。しかし相手はそれに答えることなく、愁莉に尋ね返した。






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