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幻想
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「あん、激しい……」

聞いたことのないエーリオの甘い声に、身体が竦む。
あのエーリオが、まさか、こんな……。
弟のように思っていたエーリオの痴態を見てしまい、衝撃に身を震わした。

「…………」

「………?陛下ぁ……?」

思ったよりも過敏に反応してしまったようだ。私の身体の震えは叢を伝って、ヨルダン様のお目に留まってしまったらしい。ヨルダン様の鋭い眼差しがこちらを貫く。慌てて叢を掻き分けていた手を引っ込め、除き穴を閉じた。
衝撃と緊張の二重の圧力が胸に掛かる。煩いくらいに胸が激しく脈打つ。
もしかして、気付かれただろうか……?
再び恐る恐る、向こうの様子を覗き見た。

「――――――っ!」

すると、今度はヨルダン様の鋭い眼差しが確実に私を捕えた。
確実にヨルダン様にばれてしまったようだ。いや、しかし流石にここにいるのが私だとは気付いていないだろう……。

「………陛下?」

「………ああ」

不満気で訝し気なエーリオの声が響く。
それに対してヨルダン様は短く応対し、不適な笑みを浮かべてこちらを見据えてきた。
確実に私に対して向けられた笑みに、心臓が止まりそうになる。

「どこを見てっ……ひゃ、いきなり……激しっ……!」

しかし特に詮索するでもなく、咎めるでもなくヨルダン様はエーリオとの行為を再開なされた。ただ先程と異なるのは、行為の最中、頻繁に私の方を見られることだ。あたかもこの行為を見せ付けているような行動に感じる。

「そなたも、随分感じやすい身体になったものだな」

「そん、なの……へぃ…かがぁ……!」

「…フッ……そうだったな……。ここで感じるようにしてやったのも、私だったな」

言葉言葉で、私の方を見据えるヨルダン様。
まるで私に対して言っているようなそんな錯覚さえ覚えてしまう。
熱の籠ったエーリオの声が余計に私の身体を熱く奮い立たせる。ここにいると、私も変な気持ちになってきてしまいそうだ。
エーリオのためにも早々に立ち去ってしまおう。あの様子では、エーリオは気付かないだろうし、ヨルダン様も特別咎めようとはなさっていない。

響き渡る嬌声に耳を塞ぎたくなるのを何とか堪え、脇目も振らずに急ぎその場を後にした。





「ラウル!何処行ってたんだよ!探したんだぞ!」

あの場から離れるべく我武者羅に叢を進んでいると、偶然にもカトル様と再会した。
カトル様は目に涙の粒を浮かべられ、顔を真っ赤にしてこちらを睨んでくる。
私と離れ離れになり、カトル様なりに心配して探してくれていたのだろう。本当に申し訳ないことをしてしまった。

「すまない」

私と合流できたことで、怒りよりも安堵の気持ちが勝ったようでそれ以上叱咤を受けることはなかった。




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