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幻想
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雪が降っていた。
辺りは一面の銀世界に化していた。








近年初の大雪。
寒くて長い冬の訪れを感じる。
動物たちは冬眠し、その姿を消すように人々もまた外に出てこようとはせず、家に籠もる。例外と言えば、子どもたちだけである。今では少子化、子どもの出生率が低い、子どもがいないと騒がれているが、当人たちは露とも知らず、生まれて初めて見た一面の銀世界に、気分を高揚させ雪遊びというものを満喫している。
霜焼けに悩まされながらも、楽しく遊ぶ子どもたちの笑顔は美しかった。

だが、夕方になり日も暮れると、その姿は全く見えなくなる。代わりに塾帰りの学生たちの姿が区々と見えた。
袴咲兄弟も今年大学受験を控えた受験生であった。冬登と珂夏は双子の兄弟だったが、その容姿は見事に異なり、とても双子の兄弟には見えなかった。
冬登は幼少時から病弱で身体が弱い。高校に上がってからもそれは然りで、時折学校を休むこともあった。どちらかというと外でサッカーや野球をするより、内で読書をしているような内気なタイプである。それもあってか、肌は透けるように白く黒髪がよく映えた。身体も今日の高校生のものとは違く華奢であった。中性的で男性というより、女性に見られることが多かった。一方珂夏は、反対に丈夫な身体の持ち主だった。幼い頃に一度肺炎にかかって以来、病気知らずで健康的であった。向日葵のような明るさで笑顔を振りまき、いつも周りに人が集まってきて、本人も社交的な性格であった。内で何かをしているより、太陽の下で元気に駆け回っている方が性に合っているらしく、勉強より身体を動かしている方が好きなタイプだった。

だというのに、珂夏は冬登と同じ大学を受けるために必死に嫌いな勉強をしていた。塾も同じ所に通い、何とか志望大学を射程距離にまで捉える事が出来たが、まだまだ受かるか落ちるかの瀬戸際で、安堵は出来なかった。

今日もいつも通り、塾に行ったその帰り道だった。



「冬登、寒くないか?去年も今辺り風邪引いただろ?来年は受験もあるし、風邪なんか引いてらんねえぞ」

珂夏は白い息を吐きながら隣を歩く冬登を窺った。首に巻いているマフラーに鼻まで顔を埋め、寒さに必死に耐えているのが伺えた。

更に肌が白く見えるのは、風邪を引いているかもしれないせいか、それとも積もった雪のせいか。

「分かってる……浪人はしたくないからね」

そう言い終え、更に深くマフラーに顔を埋めようとすると、クシュッとくしゃみが出てきた。







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