お題
3
「わざわざ実習の為に来たのによ!仕方ねえから、これからどっか食い行こうぜ」
今日の授業は午前中に実習があるだけで、確かに実習の為に学校に来たと言っても過言ではない。確かにこのまま真っ直ぐ家に帰るのは馬鹿らしい。
僕は隆典の誘いに乗って、学校の近くにあるラーメン屋に行くことにした。
「なあ。俺、お前と前に会ったことがある気がする」
ラーメン屋に向かう道中、隆典がこんなことを言い出した。隆典の発言に面食らってしまう。僕には全く記憶になかった。
「それって最近?」
もしかして僕が男漁りをしていた時に、身体を重ねたことがあるのかもしれないと嫌な予感が頭を過ぎる。
「いんや、かなり前。そうだ、中学生の時」
隆典の否定に、心の中で胸を撫で下ろす。だけど、中学生の時だって?そんな昔のこと覚えてる筈がない。
「……お前って、中学生の時、陸上やってなかったか?」
「え、うん、やってたけど」
隆典の問いに、吃驚する。
何で僕が陸上をやっていたのを知っているんだろう。
「やっぱり!南中の400mのエース!」
「!?」
喜びに飛び跳ねて、僕を指差してくる。確かに隆典の言っていることは僕のことだった。
僕がまだ中学生で、陸上をやっていた頃。
僕は陸上の400m走の選手で、校内一位の実力を持っていた。校内一位と言っても、所詮部内の話だ。市大会に出れば良くて三位と、そんなにパッとした結果を修めていない。
何で知ってるんだろうと疑問を抱くと、直ぐにそれは隆典によって解決した。
「俺、北中の陸上部だったんだよ!お前と闘った!懐かしーい!」
北中と言えば学区から言えば隣の中学校だ。市大会なら、絶対一緒になる。それにしても、とマジマジと隆典の顔を見てみる。
あの頃の記憶を思い返すと、確かにこんな顔があった気がする。だけどあの頃の隆典はこんな風に髪を染めてないし、無駄に髪も伸ばしていない。絵に描いた真面目君のような姿だった。
「俺、高校でも陸上やってたんだ!てっきりお前もそうかと思ってたけど、大会に出てなかったよな?それとも区が違った?」
隆典の言葉にドキッとする。
「……高校じゃ、陸上はやらなかった」
「何で?俺、お前の走り好きだったのに!」
不満そうな顔を浮かべてくる隆典に、何で僕は高校で陸上をやらなかったのか思い出していた。
高校に陸上部がなかった、ってのは違う。高校にも陸上部はあった。
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